【5月16日 AFP】12日投票のイラクの連邦議会選挙は15日、開票作業が終わりに近づき、イスラム教シーア派(Shiite)指導者のムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師の政治勢力が優勢となっている。イランと米国の影響力が弱まり、イラク政治の様相が一変する可能性が出てきた。

 今回の議会選はイラク政府によるイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」への勝利宣言後に行われた初の選挙だった。これまでの開票結果によるとサドル師と共産主義者が組んだ「改革への行進(Marching Towards Reform)」が汚職や外国の干渉に怒る国民の支持を受けて最多議席を獲得する見通し。サドル師の陣営は他陣営の候補者らから、勝利を祝う電話があったと発表した。

 棄権が記録的に多かった今回の選挙は、米主導でサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権が打倒された2003年以降、広く批判されながらも政界を支配していたエリート層にとっては屈辱的とも言える結果となった。

 サドル師自身は首相になるつもりはないとしており、実力者として影響力を発揮し多数の政党のテクノクラート(実務者)から成る連立政権の樹立を目指すものとみられる。しかしサドル師の勢力は単独過半数には達しておらず、新政権発足には長い時間がかかることが予想される。

 これまでの開票結果では、イランの支援を受けてISと戦った元民兵らの「征服連合(Conquest Alliance)」が2位につけている。米国が支持する調整型政治家で、約5か月前の昨年12月にISとの戦いで勝利宣言を行い、今回の選挙で最も有利だとみられていたハイダル・アバディ(Haider al-Abadi)首相の政党連合は3位にとどまっている。

 開票の完了を待たずにイラン政府は会議を開き、サドル師が政権を握ることを阻止する動きを見せた。会議の出席者によると、イラン革命防衛隊(Revolutionary Guards)で対外作戦を指揮するカセム・スレイマニ(Qassem Suleimani)氏がバグダッドに入り、サドル師に対抗するシーア派勢力の糾合を試みているという。

 スレイマニ氏はアバディ首相、元民兵らの「征服連合」、ヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)元首相の各勢力を一つにまとめようとしているという。アバディ首相とマリキ元首相はいずれもサダム・フセイン後のイラクの体制側にあったダワ党(Dawa Party)出身だが激しいライバル関係にある。

 臆測が飛び交っているが、開票を完了させ、新しい329議席を確定させることが当面の節目であることに変わりはない。当局者は15日、開票に異議が唱えられた2州で作業が遅れていると発表した。全国の最終的な投票結果と新しい議席の配分は数日中に発表される見通し。(c)AFP/Salam Faraj