【5月16日 AFP】国際エネルギー機関(IEA)は15日、世界のエアコン(空調装置)需要が今後30年間で3倍に増加する見通しとの報告書を発表した。これにより、エネルギー効率の高い冷房装置の模索が最優先事項の一つとなることが予想されるという。

 IEAの報告書によると、エアコンが設置された建物は現在、世界に約16億棟存在するが、この数字が2050年までに56億棟にまで増加する見通しで、これは「今後30年間に毎秒10台のペースで新しいエアコンが売れる計算になる」という。

 報告書はまた、今後予想される屋内冷房装置の急増に応じるために必要となる電力量は、米国と欧州連合(EU)と日本の現在の発電能力の合計とほぼ同じになるとしている。

 問題は、エアコンのエネルギー効率が装置によってばらつきが大きいことだ。欧州や日本で販売されているエアコンは、米国や中国で販売されているエアコンに比べてエネルギー効率が25%以上高い傾向がある。

 IEAのファティ・ビロル(Fatih Birol)事務局長は「エアコンに対する電力需要の増大はエネルギーに関する今日の議論において最も大きな盲点の一つとなっている」と指摘する。

 また、「所得の上昇に伴い、特に新興諸国でエアコンの所有が急増する」としながら、「エアコンの効率性能を最優先事項とすることが不可欠となる。今後新たに導入されるエアコンの大半に対する効率基準は、設定すべき基準をはるかに下回っている」とした。

 インドは今後数十年間におけるエアコンの増加が最大となると予想される国の一つだ。

 報告書によると、インドのエアコンは現在、国内電力使用量の10%に相当するが、この割合が2050年には45%に達する可能性があるという。これについてIEAは「夜間のピーク電力需要を満たすための発電所の新設に多額の投資」が必要になるとともに、太陽光発電技術では十分に対応できなくなると警鐘を鳴らしている。

 ビロル事務局長はこうした状況を踏まえ、「冷房設備のエネルギー効率基準の引き上げは、発電所新設の必要性を軽減すると同時に温室効果ガス排出量とコストの削減を可能にするために各国政府が講じることのできる最も簡単な措置の一つだ」と説明した。

 IEAによると、エネルギー性能基準を義務づけることで、エアコン需要に起因するエネルギーの増加を半減でき、投資、燃料、運用などのコストを2.9兆ドル(約320兆円)節約できる可能性があるという。

 エアコンは日本、韓国、米国、サウジアラビア、中国などの国々で広く利用されている。だが、世界で最も暑い地域に暮らす28億人のうち、屋内冷房装置を所有する人々は全体の8%にすぎない。

 今回のIEAの報告書は、2050年までに世界の家庭の3分の2にエアコンが設置される可能性があると予測している。(c)AFP