【5月15日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)にあるシファ病院(Shifa Hospital)では14日、家族や友人らを必死に捜す人々の姿があった。中には、その対象が遺体となって運ばれてきたことを知りながら確認作業を進める人や、安否に関する情報がなく、病室を見て回った後に遺体安置所へと向かう人々の姿もあった。

 病院では、ストレッチャーに横たわるきょうだいの遺体を前にして、「なぜ私を残して逝ってしまったんだ」と若い男性が叫んでいた。彼の悲痛な叫びは、遺体を移動するよう命令する職員の声でかき消された。「彼を早く冷蔵室に入れろ。次が到着している」

 死亡した男性は、14日に行われた米大使館のエルサレム移転に抗議する大規模なデモの最中に、イスラエル軍による銃撃などで死亡したパレスチナ人の一人だ。この日の衝突では、少なくとも55人のパレスチナ人が死亡した。死者数としては、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)とイスラエルが衝突した2014年の戦闘以来で最も多かった。

 シファ病院の状況は深刻だ。ここ7週にわたって続いていた抗議デモを背景に、必要な薬が著しく不足していたのだ。ガザの保健当局は、輸血用の血液が不足しているとして、市民に献血を呼び掛けている。

 この7週間で、パレスチナ側の死者は109人に上っているが、イスラエル側はゼロだ。

 イスラエルは、抗議デモを背後で扇動しているとしてハマスを非難する。そして、パレスチナへの攻撃については、自国を守っているだけと主張している。一方のパレスチナの人々が求めているのは、1948年に追われた土地への帰還だ。彼らはタイヤに火を付けて煙幕としながら、境界線付近に向かって石や火炎瓶を投げ込んでいる。イスラエル側はその行為に対して催涙ガスを撃ち込み、そして実弾を用いた。

 若いパレスチナ人男性のグループは、境界線付近に設置された有刺フェンスを突破しようと数時間にわたり試みた。最後まで成功することはなかった。さらにこのフェンスの先には、より頑丈な仕切りがさらに設置されており、デモの参加者らがイスラエル兵に近づくことを強固に拒んでいるのだ。