【5月15日 東方新報】中国・重慶市(Chongqing)発チベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lhasa)行きの四川航空3U8633便が14日午前、四川省(Sichuan)上空を飛行中、操縦席の右前方の窓ガラスが破損したため、同便は成都市(Chengdu)へ緊急着陸した。緊急着陸の際、右座席に座っていた副操縦士が顔と腰にけがをしたほか、乗客2人と、乗務員1人も軽傷を負った。

■操縦室は氷点下40度、副操縦士は外に吸い出されそうに

 窓ガラスの破損により、操縦室は一瞬にして気圧が下がり、気温も氷点下40度まで急降下した。高度1万メートルの上空で、徐瑞辰(Xu Ruichen)副操縦士の上半身は、外に吸い出されそうになっていたが辛うじてシートベルトに守られた。

 自動化設備も機能を失う中、劉伝健(Liu Chuanjian)機長は20年の飛行経験に頼り、手動操縦で約20分かけて成都双流国際空港(Chengdu Shuangliu International Airport)への緊急着陸に成功した。乗客119人と乗組員9人の命を守った。

 操縦席の窓は丸ごと1枚なくなっており、操縦室内の電子機器は破損し散乱、徐副操縦士の衣服はボロボロに破けていた。乗客が撮影した映像からは、客室内は食べ物や食器が散乱し、客席上部から下りた酸素マスクを乗客が慌てて装着する中、客室乗務員が乗客たちを安心させようと声をかけていたことがうかがえる。

 緊急着陸後、乗客29人が不調を訴えて病院に運ばれた。

 病院に運ばれた乗客の馬さん(53)は、「機内では朝食が運ばれ、乗客は食事中だった。それまで安定して飛行していたが、突然大きな音がして飛行機がすごい勢いで落ちているのがわかった。機内の空気が足りなくなり、呼吸が苦しいと感じ、客室乗務員の指示に従って酸素マスクを装着した。その後、機体は再び安定して飛行し、成都へ降り立った。死ぬかと思った」と話した。

「ガラスが破損した瞬間、気圧が下って操縦室内の物がすべて浮き上がった。徐副操縦士の上半身が窓の外に吸い出されそうになったが、シートベルトに守られ辛うじて飛ばされなかった。自動化設備が故障し、騒音も非常に大きくなる中、計器盤も見えなかった。高度1万メートルを時速800キロ以上で飛んでいた。気温も氷点下40度まで下がり、凍傷の恐れもあった」。劉機長は、頭の中ではいかに安全に緊急着陸するかだけを考えていたと振り返った。

 業界関係者は、窓ガラスが割れた原因は、老朽化したガラスにひびが入っていたか、窓ガラスを固定していたネジが緩み、抜け落ちた可能性もあると話している。(c)東方新報/AFPBB News