【5月14日 AFP】(写真追加)40年前にエベレスト(Mount Everest)で凍傷などにより両脚を失った中国人登山家が14日、ついにエベレスト頂上に到達した。エベレストをめぐっては、物議を醸していた両足切断者の登山禁止措置が数か月前に撤回されたばかりだった。

 夏伯渝(Xia Boyu)さん(69)は14日午前、5度目となる挑戦で標高8848メートルのエベレスト頂上に到達した。

 夏さんの登山を手配したイマジン・トレック・アンド・エクスペディション(Imagine Trek and Expedition)の関係者は「夏さんがチームのメンバー7人と共に、今朝登頂した」と発表した。

 一方でネパール政府は昨年、両足切断者や視覚障害者のエベレスト登頂を禁止。夏さんの世界の頂に立つという夢は、危うく阻まれるところだったが、同国の最高裁が3月、障害のある人々に対して差別的であると判断し、禁止措置が撤回された。

 夏さんが初めてエベレスト登頂に挑戦したのは1975年。中国政府の後援をうけたチームと共に山頂を目指したが、悪天候に行く手を阻まれた。

 酸素に乏しい極寒の環境下、山頂付近で立ち往生した夏さんは、ひどい凍傷を負い、その後両足を失った。

 1996年には血液がんの一種であるリンパ腫と診断され、今度は両膝から下を切断した。

 それでも夢を諦めなかった夏さんは、2014年と15年にエベレストを目指したが、災害が原因で両年とも登山シーズンが中断された。

 さらに前回の2016年の挑戦では、頂上から200メートルの地点まで登ったものの、悪天候のために下山せざるを得なかった。

 エベレストへの出発を前に夏さんは先日、AFPの取材に応じ「エベレストに登ることは私の夢だ。私は夢をかなえなければならない。これはまた、個人的な挑戦であり、運命への挑戦である」と語っていた。

 夏さんの他にエベレストを登頂した唯一の両足切断者は、ニュージーランドのマーク・イングレス(Mark Inglis)さんで、2006年に偉業を成し遂げていた。(c)AFP