【5月13日 AFP】イランのモハンマドジャバド・ザリフ(Mohammad Javad Zarif)外相は12日から中国・ロシア・ベルギー3か国歴訪に出発し、米国が離脱を表明したイラン核合意を崩壊から救うため合意に留まっているほかの全当事国と協議を行う予定だ。一方で、10日にシリア領内にあるイランの軍事拠点に対してイスラエル軍が前例のない攻撃を行ったことから、以前から敵対関係にあるイスラエルとイランの衝突拡大も懸念されている。

 北京、モスクワ、ブリュッセルを訪問予定のザリフ氏は出発前、自身のツイッター(Twitter)にイラン政府の声明を掲載。「国際社会に外交の勝利と認識されている合意」を放棄したとして、トランプ政権を「過激な政権」と厳しく批判した。

 また、米国が新たな制裁を発動しても欧州は通商関係を維持するとの確かな保障がない限り、イランは無制限に「産業規模」のウラン濃縮を再開する用意があると改めて強調した。

 ただ、イスラエル軍の攻撃でシリア領内のイラン人が死亡したとの報道により、ザリフ氏が担う難しい外交使命は複雑なものになっている。

 英国に拠点を置くシリア人権監視団(Syrian Observatory of Human Rights)は12日、この攻撃でシリア領内のイラン人戦闘員少なくとも11人が死亡したと発表。また同監視団のラミ・アブドル・ラフマン(Rami Abdel Rahman)代表によると、攻撃により「シリア人兵士6人と、イラン人11人を含む外国人戦闘員21人」が死亡したという。

■対立悪化を避けたいイラン

 隣国シリアでイランが軍事的な足がかりを得るのを阻止する方針を明言しているイスラエルは10日の攻撃について、イラン革命防衛隊(Iranian Revolutionary Guard Corps)がイスラエルの占領地ゴラン高原(Golan Heights)を標的に先にミサイルを発射したと主張。米ホワイトハウス(White House)もこれを支持する姿勢を表明した。

 一方でイランはイスラエル側の主張を否定し、イスラエル軍が「でっちあげの口実」に基づいて攻撃に出たと反論している。ただ、欧州の協力国との関係悪化につながりかねないことからイランは域内の対立がエスカレートする事態を避けたい意向で、自国の部隊がシリア領内で攻撃を受けたかどうかについては明言していない。(c)AFP/Eric Randolph