【5月8日 AFP】オーストラリア最高齢となる104歳の科学者が、自国では認められていない自殺ほう助の利用を求めスイスに移動する必要があったことに関し、受け入れ先の自殺ほう助機関はオーストラリアが科学者に自国で死ぬことを認めないのは「非道な行為だ」と批判した。

 デービッド・グドール(David Goodall)氏は2年前、名誉研究員を務めていたパース(Perth)のエディス・コーワン大学(Edith Cowan University)から退職を勧告された。この勧告は後に取り下げられたが、その後は生活の質が低下しているとして安楽死を望むようになった。グドール氏は不治の病に侵されているわけではない。

 スイスにはさまざまな自殺ほう助機関が存在する。そのうちの一つ「エターナル・スピリット(Eternal Spirit)」の共同創設者リューディ・ハベガー(Ruedi Habegger)氏はAFPの取材に対し、「彼(グドール氏)は不治の病ではないため、スイスに来なければいけなかった。まさに非道な行為だ。ここスイスのように、自国で、自分のベッドの上で死ぬことができるようにすべきだ」と述べた。

 自殺ほう助は大半の国で違法行為とみなされる。オーストラリアのビクトリア(Victoria)州では昨年、同国で初めて、安楽死の合法化法案が可決され、来年6月に施行されるとはいえ、対象となるのは健全な精神状態を持つ末期患者で、かつ余命6か月以内とされる場合に限られている。

■自殺ほう助の支援

 一方、スイスの法律では、健全な精神状態において自らの命を絶ちたいということを一定期間表明し続けている人は自殺ほう助を利用できる。

「完全に健康な人がやって来て、自分は健全な精神状態にあり死にたいと思っているが理由については立ち入ってほしくないと、理論上は言える」とハベガー氏は述べる。しかし同時に、健康な人が死にたいと望むのは非常にまれで、大半の医師はそうした自殺に関わることをためらうだろうと付け加えた。

 エターナル・スピリットには毎年約80人の自殺ほう助利用希望者が来るが、その大部分は高齢者、病気の人、痛みを感じている人だという。平均年齢は76歳。これまでの最年少は32歳で最高齢は99歳だ。