■「強い憤りを感じる」

 グドール氏は2日、出発に先立ち「スイスには行きたくはない。しかし、オーストラリアの制度では認められていない自殺の機会を得るためには行かざるを得ない。強い憤りを感じる」と豪ABCに話していた。

 エターナル・スピリットはすべての国がスイスと同様のシステムを導入し、人々が「尊厳ある」死を選べるようにすべきだと提唱している。

 スイスでは外国人を受け入れていない自殺ほう助機関もある。一方、エターナル・スピリットは、自殺希望者の75%を外国人が占めるという。

 自殺ほう助を利用するスイス人は通常、家で死ぬことを選ぶ。そのため、エターナル・スピリットは、外国人のために家にあるような家具を備え付けた部屋を用意し、希望する親族や友人が立ち会えるだけの広さも確保している。

 ハベガー氏によると、グドール氏は現在、友人と一緒に旅をしており、その友人が最後まで立ち会う予定だという。

■「短時間で安らか」に

 自殺ほう助を利用するとはいえ、最終的な行為は患者自身が行わなければならない。多くの機関では一定量取ると心停止に至る鎮静剤ペントバルビタールナトリウムを患者が飲む。

 ペントバルビタールナトリウムはアルカリ性で飲み込むときに軽い炎症が起きるため、エターナル・スピリットでは点滴静脈注射を使用する。針の準備は専門家が行うが、弁を開けるのは患者の役目だ。弁を開くと短時間作用型バルビツール酸塩と生理食塩水が混ざり、血管に注入される。

 ビデオ撮影も行われる。患者はカメラに向かって名前と生年月日を言い、自分がこれからしようとしていることを理解していると宣言する。カメラは患者が弁を開けるまで回り続ける。映像は患者が自らの意思で命を絶った証拠として使われる。

「以後のことはプライベートなことなので、カメラは止める」とハベガー氏は説明する。

 患者は20~30秒で眠りに落ち、「徐々に眠りが深くなり、心臓の筋肉がリラックスする。心臓発作ではないので痛みは伴わない。ただ、鼓動が止まるだけだ」。通常は1分半以内にすべてが終わるという。

 自殺ほう助の利用についてハベガー氏は、「短時間で安らかなものだ」と話した。 (c)AFP/Nina LARSON