【5月8日 AFP】米国女子テコンドーの4選手が、性犯罪者の指導者とトレーニングや遠征を強要されたとして、同国オリンピック委員会(USOC)とUSAテコンドー(USA TaekwondoUSAT)をコロラド州の連邦地裁に提訴した。原告は「米国テコンドーの五輪代表選手は、選手を保護する立場にある関係者、職員、コーチ、そして指導者から、約20年間にわたり性的な虐待、搾取、売買の被害に遭っていた」と訴えている。

 提訴したのは、ハイディ・ギルバート(Heidi Gilbert)、マンディ・メルーン(Mandy Meloon)、アンバー・メアンズ(Amber Means)、ギャビー・ジョスリン(Gaby Joslin)の4選手。今月4日に提出した訴状では、コーチのジーン・ロペス(Jean Lopez)氏とテコンドーで2度の五輪王者になった弟のスティーブン・ロペス(Steven Lopez)氏の名前が挙がっており、アスリートの安全を確保するための組織「US Center for SafeSport」は、ジーン氏に永久追放処分を下し、スティーブン氏については捜査の間、暫定的な資格停止処分を科している。

 世界大会で2度の優勝を誇るメルーンは、15歳のときにエジプトで開催された1997年のW杯でジーン氏にレイプされたと2007年にも主張していたが、その後、USOCへの仲裁の申し立ては認められず、同氏が率いた同年の代表メンバーから外されていた。訴状の中では「少なくとも2007年以降、USOCとUSATは問題を把握しながら両氏を保護し、力を与え、権力を委ねてきた。これにより、ジーン・ロペス氏はテコンドー米国代表コーチとしての権限、正当性、そして信頼性を、そして弟のスティーブン氏は米テコンドー界のスーパースターとしての地位を手にしてきた」としている。

「そうすることでUSOCとUSATは、ロペス兄弟という2人の性犯罪者に何人もの若い女子選手を差し出した。そして、『メダルと金銭』を共有するという欲望のため、商業的な富をもたらしてくれるスティーブン・ロペス氏を告発から免れるようにしていた」

 ギルバートも、2002年のエクアドル大会と2003年のドイツ大会でジーン氏から性的暴行を受けたと訴えており、選手が米代表に入るためには「ロペス兄弟の性的要求に応えるしか方法はなかった。それを拒んだ場合、ロペス兄弟をはじめ、USOCやUSATによって控えに回されたり、資格停止にされたり、代表チームから締め出されたりすることになった」としている。

 USOCの広報を務めるパトリック・サンダスキー(Patrick Sandusky)氏は、USAトゥデー(USA Today)紙とニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙に発表した声明で、組織として「われわれが面倒を見る選手たちの支援、保護、そして強化に努めている」とすると、「US Center for SafeSport」の発足などを含めて、「こうした悪質な行為から、今まで以上にアスリートたちを保護していく」と述べた。

 一方、USATの声明では訴訟の詳細を把握していないとして、「訴訟問題の最中であるため、現時点でこれ以上のコメントは差し控える」としている。(c)AFP