【5月7日 AFP】英国の宇宙物理学者、故スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の死後に発表された新たな論文によって、天文学者らを大きく二分してきた問いについての議論が再燃している。それは、私たちが今いるこの宇宙は拡張し続ける無限の「多元的宇宙」のうちの一つにすぎないのではないかという問いだ。

 論文はベルギーのルーベンカトリック大学(KU Leuven university)のトマス・ヘルトーク(Thomas Hertog)氏と共同執筆され、博士が亡くなった3月14日以前に提出されたもので、今週「Journal of High Energy Physics」に掲載された。

 ある学派によると、宇宙はビッグバン(Big Bang)の後、爆発的に拡張し始めた。この拡張あるいは「膨張」は大部分で永遠に続いていくが、この動きが停止する所もいくつか存在する。私たち人類が今いるような宇宙は、こうした場所につくられている。

 多くの科学者らは多元的宇宙論を嫌い、ホーキング博士もその一人だった。博士は昨年行われたインタビューで、「私は、多元的宇宙のファンであったことは一度もない」と語っていた。だが、天文学に対する最後の貢献となった今回の論文では、この理論をはねつけるのではなく、その数を大幅に縮小した理論を提唱している。

 ホーキング博士が在籍していた英ケンブリッジ大学(Cambridge University)は、博士が同論文について「私たちは単一宇宙にまで縮小したわけではない」が、「私たちの研究結果は、多元的宇宙の著しい縮小、すなわち、存在するかもしれない宇宙の数は(無数ではなく、それより)はるかに小規模であることを示している」と語ったとしている。

 ヘルトーク氏はAFPの取材に対し、新たな仮説は「ひも理論、弦理論」として知られる理論物理学の一つの考えに基づいたものであるとし、宇宙には多くの宇宙があるとしても、その数は「明らかに有限」だと結論付けていると語った。(c)AFP/Mariette le Roux and Laurence Coustal