■脅し

 岳さんの書簡によると、4月22日深夜1時、大学の生活指導員が岳さんの母親を引き連れて学生寮にやって来て、携帯とパソコンから関連情報をすべて削除するよう求めたとされる。その時の母親は「怯えた」様子だったという。また、大学の職員から、卒業できるかどうかわからないと遠回しに脅されたことも明らかにした。

 大学のこの対応によって、母親が「情緒不安定」となり「親子関係が壊れた」と岳さんは話している。「母が泣き、自らの顔を平手打ちし、ひざまずき、自殺すると言っているのを見て、私の心はひどく痛んだ」と打ち明けた。

■象徴的な動き

 当局の検閲を避けるため、中国のソーシャルメディアではさまざまな工夫が試みられている。今回のケースでも、画像認識技術で読み取られないよう、書簡を逆さまに撮影したものなどが投稿された。

 そして新たにとられた手法が、ブロックチェーン技術を使ったものだ。分散型で不可逆性の特性を持つブロックチェーン技術は、通常、仮想通貨に使われることが多い。ここでは基本的に暗号化された「台帳」が分散的に管理されているため、改ざんは事実上不可能となっている。

 岳さんの書簡は、この取引データに添付されたのだ。ただ、ブロックチェーンの取引データに添付された書簡を見つけるのは簡単ではない。

 香港ビットコイン協会のレオンハルト・ウィーズ(Leonhard Weese)会長は、書簡を読むためにはブロックチェーン全体をダウンロードし、特別なソフトウエアで検索しなければならないことを説明しながら、岳さんの書簡がブロックチェーンにひも付けされたことは「主に象徴的な」意味合いを持つと指摘する。

 ウィーズ会長は、「この書簡はブロックチェーン上では削除(または変更)できない。(そうするためには)ネットワーク上のすべてのユーザーが永久に保管する必要があるからだ。ただ、メッセージを拡散する手助けにはならないだろう」と話した。

 それでも、これまでに寄せられた数百件のコメントを削除するのに検閲官らは苦労するだろう。