【4月26日 AFP】ドイツ南部バイエルン(Bavaria)州の州首相が25日、全ての公共施設の入り口にキリスト教の十字架を掲げるよう定めた政令を出し、物議を醸している。

 マルクス・ゼーダー(Markus Soeder)州首相は、「十字架はバイエルン人のアイデンティティーと生き方を象徴するものだ」と宣言。宗教的な象徴ではなく、文化の象徴と見なすべきだとの持論を展開した。

 ゼーダー氏の所属する保守系の地域政党、キリスト教社会同盟(CSU)は、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党。10月に州議会選挙を控え、極右勢力の台頭という課題に直面している。

 政令をめぐっては、ドイツ憲法が政教分離を定めているとして批判の声が上がっているほか、ゼーダー氏は宗教的な象徴を利用して政治をもてあそんでいると複数の宗教指導者が非難している。

 ムスリム中央評議会(Central Council of Muslims)のアイマン・マツィエク(Aiman Mazyek)会長は、「われわれイスラム教徒は十字架を問題とは思わない」が「政府の中立性は常に尊重されるべきだ」と述べた。

 一方、風刺ウェブサイト「デア・ポスティルオン(Der Postillon)」は、ゼーダー氏の次の一手はきっと全ての行政機関の玄関マットとして「ドイツ基本法」を敷くよう法令で定めることに違いないとの記事を掲載した。(c)AFP