【5月15日 AFP】いかなる種類の感情移入であっても、爬虫(はちゅう)類に対して自分が感情移入することがあろうとは思ってもみなかった。ヘビは、愛らしい生き物とはとてもじゃないが言えない。だが、米テキサス州最大の「ガラガラヘビ狩り祭り」との出会いで私の考えは変わったかもしれない。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」のヘビの見学コーナー(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott

 

 私はいわゆる都会っ子ではない。北カリフォルニアの原野の自然に慣れ親しんで育った。5歳頃になって釣りざおを扱えるようになると、すぐに両親に連れられてフライフィッシングを始めた。10代の頃は毎週末、カモ猟に行った。釣りや狩りをしながら育てば、動物をあやめるという考えに違和感を抱かなくなる。人間とはそういうものだということを最初から学ぶようになる。つまり、鳥や魚は食料であり、食料にする過程で生き物が過度に苦しむことがないようにしなければならない。

 だが、ガラガラヘビ狩り祭りの雰囲気はちょっと違った。

 最初に少し背景について触れておこう。この行事は60年にわたって毎年行われてきた。主催者いわく、会場となるテキサス州ノーラン(Nolan)郡スイートウオーター(Sweetwater)はかつてガラガラヘビが非常に多く、人が居住するにはあまりに危険な場所だった。人々に移住を呼び掛け、家畜の安全を確保するためにヘビを駆除する必要があったことが発端だったらしい。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターの「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」で来場客に示された、体を切り落とされた直後にまだ生きている兆候を見せるヘビの頭(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott

 

■小さな町の貴重な現金収入

 スイートウオーターはウェストテキサス(West Texas)にある人口1万1500人の小さくてのどかな田舎町だ。産業や働き口という点では、どちらもほとんどない。ただし、ガラガラヘビ狩り祭りとなると話が違う。木曜の夜から日曜の夜まで通しで行われるこの祭りには数万人が訪れ、この町に極めて必要な現金をもたらす。

 ガラガラヘビ狩り祭りはテキサスの有名行事となっているので、撮影対象になることも多い。私も数年前に写真を見たことがあり、今年フロリダからヒューストン(Houston)へ引っ越した際に自分の目でぜひ見てみたいと思った。過去にもよく取材されている題材を自分の視点でいかに撮影するかは、カメラマンにとっては常に挑戦だ。

 週末はこの祭りに行って過ごし、ガラガラヘビが捕獲されるところを自分の目で確かめるためにスネークハンターと荒野にも出掛けた。

 会場は円形の競技場で、農産物や家畜の品評会のような雰囲気だ。人々は入場料を払ってから、場内のさまざまなブースを回っていた。見たところ、観客は概して2種類のタイプに分けられそうだった。このエンターテインメントを楽しむためにほぼ毎年通っている地元の人々と、ウェストテキサスらしいショーを見るために各地からやって来た人々だ。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」でヘビを持ち上げるトラビス・ガードナーさん(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott

 

■恐怖のにおい

 度胸のあるクレイジーな人々が入場券を求めて列をつくり、(子どもと軍関係者は)入場料5ドル(約500円)か(大人は)10ドル(約1000円)を払い、ブース巡りを始める。会場内にはまずメインコーナーがあり、ここでは何百匹ものヘビがのたくっている。それからヘビの毒液を抜いたりヘビの皮を剥いだりするコーナーがあり、ヘビを首に巻いて写真撮影ができる機会も十二分にある。さまざまな売店には、期待通りのグッズ(ヘビから作ったありとあらゆるもの)から意外なものまで(例えばフードプロセッサー)が並べられていた。

 私が最初にやられたのは悪臭だ。メインコーナーまで5~6メートルの場所に近寄った途端、むかむかするムスク(じゃこう)のようなにおいが鼻孔に侵入してきた。1日目の終わりにちょっと調べたところ、あのにおいはガラガラヘビが恐怖を感じると発するフェロモンの一種だと知った。

 ヘビに対して気の毒に思い、胸の痛みを覚えるようになったのは、これが初めてだった。彼らはまあ、子犬のように愛らしいとは言えないが、苦しんでいるのは明らかであり、私は同情を禁じ得なかった。

 

(c)AFP / Loren Elliott

 

 ガラガラヘビ狩り祭りのヘビたちは野生で捕獲されたものなので、私はどうやって捕まえるのかを見るために土曜日、ハンターたちに同行することにした。

 多くの動物同様、ガラガラヘビも行動パターンが大体予測でき、人間ほどの大きさの生物は何でもとにかく怖がり、そうした相手との対決を回避しようとする。最もよく見つかるのは巣の中だ。ハンターたちは巣を発見すると、まずヘビを追い出しにかかる。巣の中にガソリンを噴射してヘビを入り口までおびき寄せる人々もいるが、この方法は特に環境活動家らの間では問題視されている。私が同行したハンターはガソリンを使用しなかった。

 彼は小さな鏡を使って巣の奥に太陽光を反射させて念入りにヘビを探した。そうしてヘビが近くまで来ると、先がUの字形になった金属の長い棒でヘビを捕まえるのだ。捕獲したヘビは通常そのまま運搬用の箱に入れるのだが、私がついて行ったハンターは車に戻って友人たちに「ショー」を見せ、彼らが触ることができるようにヘビの頭の後ろをつかんで差し出した。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」の期間中、狩りに出かけるジェイソン・ファーマーさんと7歳と9歳の息子2人(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott
米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」の期間中、狩りに行ってジェイソン・ファーマーさんの子どもたちにヘビを見せるクリフ・ジョーンズさん(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott

 

 ガラガラヘビ狩り祭りのメインコーナーに登場するヘビたちは、こうした箱の中にしばらく入れられている。ぎちぎちの箱の中に数日間、詰められたままのヘビもいる。中であまりに重なっているため、箱の底の方にいて、メインコーナーの場所にぶちまけられたときには窒息してしまっているヘビもいる。

 祭りの中を歩き回っている間、ヘビ狩りを正当化する主張を耳にしたが、それらは私が毎晩ホテルに帰ってから調べたこととはしばしば矛盾していた。例えば米国では毎年5~6人がヘビにかまれて亡くなっている。これはガラガラヘビだけではなく、すべてのヘビを入れた数だ。一方、米国立気象局(NWS)によると過去10年間の落雷による死者は年平均30人程度。つまり、米国では雷に打たれて死ぬ人の方が、ヘビの毒で死ぬ人よりも5倍多いのだ。

 では経済的な側面はどうか。町が心底、必要としている収入をこの祭りがもたらしていることは紛れもない事実だ。スイートウオーターは小さな町で、多くの人々が州平均を下回る貧困生活を送っている。祭りで大勢の人が訪れ、多くの金を落としてくれるという主張はそれ自体としては妥当といえる。

 だが、行事全体にはいくらかの矛盾を感じずにはいられなかった。ガラガラヘビ狩り祭りに関わっている人々は、自分たちが子どものころからなじんできた長年の慣習を続けているだけだ。けれども私の立場からは見物するには耐え難いものがあった。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」で、内臓を取り出され、皮を剥がれるヘビ(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott

 

 特にむごたらしく異様なのは、ヘビの皮剥ぎコーナーだった。ヘビの皮を剥ぐのは血みどろの作業だ。身から皮を剥ぐと、辺り一面にヘビの血が飛び散る。

 狩り祭りには毎年「ミス・テキサス」がやって来るのが伝統で、今年のミス・テキサスはこの皮剥ぎに参加した。髪をきっちりまとめ、完璧なメークを施し、優勝者に与えられるたすきを掛けてミスコン用のいでたちをした「女王」は、殺されたばかりのヘビの皮を剥ぐ役として真っ先に思い浮かべる人物像とはほど遠いかもしれない。でも、そう思うとしたらそれは、スイートウオーターのガラガラヘビ狩り祭りに来たことがないからだ。今年のミス・テキサスのマルガーナ・ウッド(Margana Wood)さんは、この皮剥ぎという汚れ仕事にまったく尻込みしなかった。両手を血まみれにしながらヘビの内臓を取り出し、それが終わると血がべっとり付いた手のまま、後ろの白い壁にサインを書き込んだ。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」で、ヘビの皮を剥ぐミス・テキサスのマルガーナ・ウッドさん(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott
米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」で、ヘビの皮を剥ぐミス・テキサスのマルガーナ・ウッドさん(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott

 

 今回の取材は、ジャーナリストである私たちが足を踏み外さないよう慎重に進まなければならない一線を明確に示してくれた。誰かにとっての生活様式と動物虐待との境界線はどこにあるのか。答えが見つかったかどうかは分からない。私が人生で経験してきたことは、スイートウオーターの住民とは根本的に異なっている。ジャーナリストとして思うのは、取材対象の人々や出来事に対する理解に、自分自身の人生経験がどう影響しているのかを批判的に問い直すことは重要だということだ。

 カメラマンとしては忘れ難い仕事だったことは間違いなく、来年もまた訪れたいと思っている。それから私が気付いたのは、自分が思っていたよりもずっとヘビに感情移入できることだった。

このコラムはローレン・エリオット(Loren Elliott)がAFPパリ本社のヤナ・ドゥルギ(Yana Dlugy)記者と共同で執筆し、2018年4月11日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。

 

米テキサス州ノーラン郡スイートウオーターで開催された「スイートウオーター・ガラガラヘビ狩り祭り」で剥がれたヘビの皮(2018年3月10日撮影)。(c)AFP / Loren Elliott