【4月26日 AFP】ロシア・プレミアリーグのスパルタク・モスクワ(Spartak Moscow)とFCゼニト(FC Zenit)が、それぞれ差別的行為でスタジアムの一部無観客と罰金の処分を受けた。しかしロシアサッカー連合(RFS)の幹部は、夏にW杯(2018 World Cup)を開催する自分たちだけが不当に問題視されていると不満を口にしている。

 昨季王者のスパルタクは、FKトスノ(FK Tosno)に所属するカボベルデ出身のヌーノ・ローシャ(Nuno Rocha)に対して猿まねのチャントを浴びせたため、処分を科された。ゼニトは「ナチス(Nazi)のスローガン」を叫んだことで、1600ドル(約17万円)の罰金を科されている。

 ローシャは19日に行われた国内カップ戦のPK戦で、チームを勝利へ導く決勝のキックを決めると、スパルタクサポーターの前を走りながら金星を喜び、大音量で浴びせられる猿の鳴き声をまねたチャントに対して耳に手を当てるしぐさを見せた。チャントはローシャがPKを蹴る準備をしていたときから始まっていたとみられる。

 ゼニトの問題は14日に行われたアンジ・マハチカラ(Anzhi Makhachkala)とのリーグ戦で起こり、懲罰委員会によれば、ゼニトのサポーターがナチスのアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)をたたえる極めて問題のある言葉の一種を叫んだという。

 ロシアにはびこる人種差別とフーリガニズムへの不安が、W杯開幕に向けた盛り上がりに暗い影を落とす中、今回の処分はロシアサッカーに対する国際社会の評価をさらに下げるとみられる。ロシアサッカーの人種差別については、3月に行われたロシア対フランスの親善試合でも猿まねチャントが問題になり、国際サッカー連盟(FIFA)が調査を行っている。

 ところがRFSで反人種差別の査察官を務めるアレクセイ・スメルティン(Alexei Smertin)氏は、ロシアの問題ばかりが不当に取り上げられていると話し、ロシアが欧州で外交的に孤立していることが、偏った見方を生む原因になっていると主張した。

「(差別の問題が)ロシアで他の国より多く起こっているとは言えない。政治情勢を考慮に入れないわけにはいかない。この件に関しては、確実にバイアスがある」

 欧州サッカーの反人種差別団体(FARE)の報告によると、2016-17シーズンのロシア国内の試合では、人種差別行為や極右的な事件が89件に上ったという。数字はその前の3シーズンとほとんど同じで、サッカー界の差別をなくそうというロシアの運動がほとんど実を結んでいないことがうかがえる。

 W杯ロシア大会は7月15日にモスクワで決勝が行われ、ゼニトの本拠地があるサンクトペテルブルクでは準決勝の1試合が行われる。どちらの町にも、国家主義的な過激サポーターの一大グループが存在していて、試合中の醜い出来事は数え切れないほど起こっている。(c)AFP