【4月26日 AFP】カナダの最大都市トロントで23日、レンタカーのワゴン車が歩行者らに突っ込み、10人が死亡した事件で、容疑者の男は事件直前、ソーシャルメディアへの投稿で「インセルの反乱」を称賛していた。この「インセル」とは何を意味するのか?

 事件では、アレク・ミナシアン(Alek Minassian)容疑者(25)が殺人10件などの罪で訴追された。警察によると、犠牲者の大半は女性だった。

「インセル(incel)」は、あるカナダ人女性が20年以上前に立ち上げたウェブサイトで使用した「非自発的独身者(involuntary celibate)」という言葉を短縮したもの。同サイトはパートナーとうまく巡り合えない人々の支援を目的としていた。

 だがこの言葉は後に、インターネット上の挑発的な投稿や女性嫌いの人々が使用するようになり、現在では一般的に、自分は性的関係を持つことができないと感じる男性のことを指して使われている。

 インセルと呼ばれる男性の多くは、自分が独身なのは女性側に非があると考え、インターネットの掲示板などにいらだちや怒りをぶつけている。そうしたコメントの中には、性差別や人種差別、さらに同性愛差別に当たるものや、反フェミニスト的な主張もよく見られる。インセルのために作られたウェブサイトは、暴力的なコンテンツの温床となっているとして批判を集めており、警察の目に留まることも増えている。

 警察当局の24日の発表によると、ミナシアン容疑者は事件直前にフェイスブック(Facebook)で、ネット掲示板の「4chan」に言及した上で、「インセルの反乱は既に始まっている! われわれはチャドやステイシーを全員打倒する!」と投稿していた。「チャド」と「ステイシー」は、魅力的な男女を呼ぶときにインセルが使う名前。

 またミナシアン容疑者は同じフェイスブック投稿の中で、2014年にカリフォルニア州で6人を殺害し自殺したエリオット・ロジャー(Elliot Rodger)容疑者(22)を「最高の紳士」と称賛していた。

 ロジャー容疑者は犯行前にユーチューブ(YouTube)に投稿した動画で、自分が童貞であることに対する不満をぶちまけ、自身を拒絶し無視した女性全員に「罰を与える」と宣言しており、インセルらの間では英雄のような扱いを受けている。(c)AFP