【4月25日 AFP】2016年にオランダ・ハーグ(Hague)の国連(UN)旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)でジェノサイド(大量虐殺)などの罪で禁錮40年の有罪判決を言い渡されたボスニア・ヘルツェゴビナ内戦のセルビア人勢力指導者、ラドバン・カラジッチ(Radovan Karadzic)被告(72)の上訴審の審理が23、24日の両日、ハーグで行われた。被告側は無罪あるいは裁判のやり直しを、検察側は終身刑を求めた。

 審理はICTYを継承したハーグの国際刑事法廷メカニズム(MICT)の法廷で行われ、最終日の24日、カラジッチ被告は検察側の起訴内容は「上下が逆、間違った方が上」になっていると主張した。また同被告はセルビア人に「宣戦布告」したのはボスニアのイスラム教徒の方だと非難し、自身はバルカン半島の平和のために尽力したと主張した。

 同被告は、自身に対する2016年の複数の戦争犯罪とジェノサイドでの有罪判決を破棄し、無罪判決あるいは裁判のやり直しを求めた。検察側は、「(同被告は)その強大な権力を乱用して無実の市民の血を流させた」として、最高刑である終身刑を求めた。

 カラジッチ被告は、旧ユーゴスラビアを分裂解体させた民族紛争のさなかに発生し10万人が死亡、約220万人が家を失ったボスニア・ヘルツェゴビナ内戦で果たした役割について罪を問われ、2016年3月に禁錮40年の有罪判決を受けた。

 カラジッチ被告は1995年のスレブレニツァ(Srebrenica)の虐殺を含む10件の罪で有罪判決を受けた。第2次世界大戦(World War II)後の欧州で最悪の大虐殺ともいわれるスレブレニツァの事件では約8000人のイスラム教徒の成人男性と少年が家族から引き離されて銃殺され、集団墓地に埋められたとされる。

 また44か月間にわたってボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボを包囲し約1万人を殺害した狙撃・砲撃の指揮をとった件でも有罪とされた。

 だがカラジッチ被告は、当時ボスニアのイスラム教徒勢力はサラエボに拠点を置いており、サラエボ全域を支配してボスニアのセルビア人を追放することを目指していたと述べ、「われわれの方が宣戦布告されたのであり、防衛は正当」だったと主張した。

 テオドア・メロン(Theodor Meron)裁判長は、他の4人の判事と共に「適切な手続きによって」判決を下すと述べ、審理を終えた。(c)AFP/Jo Biddle