【4月25日 AFP】カナダの最大都市トロントで、ワゴン車が歩行者らに突っ込み10人が死亡、15人が負傷した事件で、当局は24日、車を運転していたアレク・ミナシアン(Alek Minassian)容疑者(25)を殺人10件と殺人未遂13件の罪で訴追した。容疑者は身柄を拘束された際、警察官に向かって「俺を殺せ」と叫んでいた。

 同国のジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は、事件に動揺する国民らに対し、この「無分別な襲撃」によって同国の価値観が揺るがされることがないよう呼び掛けている。

 AFPの取材に応じた韓国ソウルの外務省職員によると、23日に起きた同事件では韓国人2人が死亡、さらに1人が重傷を負った。警察は、事件以前にミナシアン容疑者に関する情報は得ていなかったとしている。また情報機関や安全保障機関も、容疑者を監視対象とはみなしていなかった。

 事件については、英ロンドンや仏ニース(Nice)などの大都市で発生した過激派によるトラック突入事件との類似点を指摘する声が上がっているが、ラルフ・グッデイル(Ralph Goodale)公安・非常時対応準備相は「現在のところ国家安全保障とのはっきりしたつながりはない」として、この見解に否定的な考えを表明。だが当局は一方で、人通りの多い昼食時に発生したこの事件が故意によるものだったことは疑いがないとしている。

 ソーシャルメディアに投稿された映像によると、容疑者は犯行直後、前面がひしゃげたワゴン車の脇に立って左手に何かを持ちながら、拳銃を構えた警官に向かって「俺を殺せ」と叫んでいた。警官は容疑者に近づくと、ひざまずくよう命じ、手錠をかけた。トロント警察当局は後に、容疑者は武器を所持していなかったことを明らかにしている。

 ミナシアン容疑者と同じ高校に通っていた男性はカナダ放送協会(CBC)に対し、容疑者の行動は「いつも非常に変」だったと説明。暴力的な言動はなかったものの、「周囲の居心地を悪くさせる」人物だったと語っている。(c)AFP/Dave Clark