【4月24日 東方新報】「迷惑電話が増えて困っている。電話番号を変えるわけにもいかないし…」と話すのは北京市(Beijing)に住む許さん。出前を一度取ったことがあるだけだという。

 餓了麼(Ele.me)で出前を注文したという柴さんは、注文して10分後、注文の品が売り切れたため、別の物に変更してくれと電話がかかってきた。

「相手が提示した注文内容や個人情報が正確だったため、疑わなかった。支付宝(アリペイ、Alipay)の番号を伝えると、気づいたときには2000元(約3万4000円)取られていた」。注文先に確認すると、電話をかけてきた者は、注文先の店員ではなかったという。

 中国では出前ビジネスが盛んだが、その弊害も出てきたようだ。インターネット上で出前を注文する際に個人情報を入力しなければならないが、こうした個人情報は安全なのか。

■出前先の情報、取り放題?

 インターネットで検索すると、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上でもたくさんの「電話セールス」グループを見つけることができる。中には「餓了麼、百度外売(Baidu Waimai)、美団(Meituan)の顧客情報売ります」などと、中国の有名出前企業の名前と共に売り出されている。

 インターネットで出前プラットフォームを運営する美団のカスタマー・サービス担当者は、「美団内部では厳格に情報管理を行っているが、店舗や代理業者、配達員といった部分で情報漏えいの可能性は排除できない」としている。

 SNSグループで個人情報を違法に転売する関係者によると、個人情報の相場は、1万件で700~2000元(約1万2000~3万4000円)で、5000件から「注文」を受け付けるという。

 では、一体どこから情報が漏えいしているのだろうか。あるインターネット通信会社で出前の代理店舗の管理担当者によると、「自分が担当しているエリアの顧客情報なら抜き取れる」と話す。また、大胆にも1件5毛(約8.6円)で取引に応じると持ちかけて来た。情報の正確性は保証されているし、どれも新しいため、相場より少し高めなのだという。専用のソフトウェアを使って、システム上の情報をクローリングして情報を抜き取るのだという。

 記者は、出前の配達員だという男と連絡を取り、顧客情報を売ってくれるかと尋ねると、1件1元(約17円)で応じるという。「情報はすべて、今日配達した顧客だと保証するよ」。男からは、その日の配達先だという35人分の配達用電子伝票画面や紙の伝票の写真が送られてきた。翌日にも、この男から記者に「今日の情報はいるか」と電話がかかってきた。

 インターネットセキュリティの専門家で北京白帽匯科技(Beijing Baimaohui Technology)創業者の趙武(Zhao Wu)氏は、「個人情報の漏えいは頻繁に起こっているが、セキュリティ対策の技術が追いついていない。国民の個人情報は危険にさらされている。出前業者は情報管理の仕組みを改善し、情報を保護する手段を常に更新していくべきだ。また、何重にも保護対策を図るべきだ」と話している。

 また、深セン(Shenzhen)仲裁委員会の潘翔(Pan Xiang)仲裁員は、「国家や金融、通信、交通、教育、医療機関の所属員が個人情報の侵害に当たる行為を犯した場合、3年以下の懲役または拘留と罰金が科される」と説明した。(c)東方新報/AFPBB News