【4月23日 AFP】インド北部ジャム・カシミール(Jammu and Kashmir)州で今年1月、8歳になるイスラム教徒の少女がヒンズー教徒の男らに集団レイプされた末に殺害された事件以降、少女の家族が住んでいた村ラサナ(Rasana)ではイスラム教徒が一切いなくなってしまった。

 現地警察によると、少女はバカルワル(Bakarwal)と呼ばれるイスラム教徒の遊牧民出身で、村の多数派を占めるヒンズー教徒たちの一部が、夏季には丘陵地帯で放牧を行うバカルワルの人々を追い出すべく、少女をレイプし殺害したという。

 その企ては目論み通りになったようにみえる。事件後、少女の家族は警察の保護の下で村から丘陵地帯へ移動し、また他のイスラム教徒およそ100人全員が村を離れた。

 犠牲となった少女の家族が暮らした家は空き家となり、武装した警官5人が警備に当たっていたものの、その半数は外で椅子に座り眠っていた。

 警察によると少女はヒンズー教の寺院に5日間監禁され、繰り返しレイプされた末に撲殺された。

 ジャム・カシミール州はインドで唯一イスラム教徒が多数派を占める州だが、事件が起きた南部ジャム(Jammu)県はヒンズー教徒が多数を占める。ただ当局の文書によると、ラサナではヒンズー教徒とイスラム教徒はしばしば、お互いについて警察に訴え出ることはあったものの、事件までは比較的平和に共存していたという。

 少女の家族にお金を寄付しようとパンジャブ(Punjab)州からやって来たイスラム教徒グループの男性は、事件がナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相率いるヒンズー至上主義の政権があおったイスラム教徒に対する敵意を反映していると非難。

 ただ一方で、「インドでは今、この事件を機に考え方が変わりつつある。みんなが病的な考え方に立ち向かっている」と語った。(c)AFP/Alexandre MARCHAND