【4月22日 AFP】イタリアのある国立公園で生物学者が実施した捕獲作戦で希少なヒグマが死んだ事件について、公園当局が20日、調査を実施した。

 イタリアのアペニン(Apennine)山脈に生息するマルシカヒグマはヒグマの亜種で、絶滅危惧種だ。今回の捕獲作戦は発信器付きの首輪を装着し、監視を強化するために許可されたもので、中部アブルッツォ(Abruzzo)州、ラツィオ(Lazio)州、モリーゼ(Molise)州の国立公園で実施された。

 しかし国立公園管理当局によると18日夜、筒型のわなで捕獲されたマルシカヒグマの若いオス1頭に鎮静剤を打ったところ「呼吸障害」を起こした。蘇生を試みたが、まもなく死んだ。

 イタリアのメディアによると、公園当局が捕獲しようとしていたのは周辺で問題を起こしている別のクマで、死んだマルシカヒグマは作戦の対象にさえなっていなかった。

 この国立公園の責任者、アントニオ・カラーラ(Antonio Carrara)氏は「捕獲作戦中に麻酔による緊急事態が起きたのは初めてだ」と述べた。同氏は「(捕獲の際には)リスクがクマにとって最低限になるようにしているが、それでも完全には排除できない」とした上で「公園職員には全幅の信頼を置いている」と述べ、死体解剖によって死因が解明されることを期待すると語った。

 世界自然保護基金(WWF)イタリア支部は「われわれが直面している損失は非常に深刻だ」と述べ、捕獲手順を見直し、動物の安全を確保するよう求めた。WWFによると、絶滅の危機にあるマルシカヒグマの個体数は今や50頭以下となっている。(c)AFP