【4月21日 AFP】米国体操連盟(USA Gymnastics)の元医師であるラリー・ナサール(Larry Nassar)被告が女子選手に性的暴行を加えていたスキャンダルで、その事件現場として中心的役割を果たした練習施設を所有するベラ・カローリ(Bela Karolyi)氏とマルタ・カローリ(Martha Karolyi)氏夫妻が、テレビ番組のインタビューで、同被告が少女たちを餌食にみだらな行為をしていたことは知る由もなかったと主張した。

 米体操五輪選手の指導者を務めていた妻のマルタ氏は、22日に放送される米NBCテレビの番組「デートライン(Dateline)」に出演し、「子どもたちと一緒に治療室に入っているご両親もいたのに、ナサール被告の行為を見ることは不可能でした。どうしたら私が目撃することができたでしょう?」と主張した。

 一方、夫のベラ氏は虐待行為が発覚してナサール被告が刑務所行きになったことに衝撃を受けていると明かし、「すべてが青天のへきれきでした。爆弾のようにドカンと破裂したのです」と述べた。

 現在54歳のナサール被告は、五輪に出場したスター選手を含めて260人以上の女子選手を虐待していたとして訴えられ、今年1月に最大175年の禁錮刑を言い渡された。治療と偽って約20年もの間行われていた性的虐待の多くは、カローリ夫妻がテキサス州郊外に所有する2000エーカー(約810ヘクタール)にも及ぶ広大な練習施設で行われていた。

 現在75歳のカローリ夫妻はナサール被告や米体操連盟と共に、練習施設で被害を受けたと主張する五輪選手のシモーネ・バイルス(Simone Biles)、アレクサンドラ・レイズマン(Alexandra Raisman)、マッケイラ・マロニー(McKayla Maroney)氏、ジョルディン・ウィーバー(Jordyn Wieber)、ガブリエル・ダグラス(Gabrielle Douglas)から民事訴訟で訴えられている。

 またマルタ氏は「ひどい話です。それが有名な選手か無名の選手かに関係なく、子どもを虐待したナサール被告の行為は犯罪であり、非常につらい」とコメント。ナサール被告の虐待行為が発覚し、同じ練習場で再びトレーニングすることは難しいと一部の体操選手が訴えていることから、夫妻の練習施設は今年1月に米体操連盟からすべての契約を打ち切られている。

 ルーマニア出身のベラ氏は、米国に亡命したわずか3年後の1984年ロサンゼルス五輪で、体操女子のメアリー・ルー・レットン(Mary Lou Retton)氏を金メダルに導いた。一方のマルタ氏は、ベラ氏の下で米代表コーチを務め、2001年からは同コーディネーターに就任。2004年アテネ五輪ではカーリー・パターソン(Carly Patterson)氏、2008年北京五輪ではナスティア・リューキン(Nastia Liukin)氏、2012年ロンドン五輪ではダグラス、2016年リオデジャネイロ五輪ではバイルスをそれぞれ個人総合の金に輝かせた。(c)AFP