【4月20日 AFP】伝統を重んじるサウジアラビアでかつて文化的反逆の象徴だったカラフルでスポーティーに改良されたアバヤは、新しいトレンドとして定着しつつある。

 紅海(Red Sea)に面する街ジッダ(Jeddah)で、女性アスリートたちがこの衣装をまとってランニングを行う写真が先月、インターネットで拡散された。これを受け、公共の場では全身を覆う、伝統的には真っ黒な衣類の着用が義務付けられている国に住む女性たちの衣服に関する自由について、新たな論争が巻き起こった。

 この新しい衣類について、伝統に対する冒涜だとネット上で怒りをあらわにした文化的純粋主義者もいた。しかし、現国王によってその後継者に指名されたムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子が、イスラムではどのようなアバヤも義務ではないと発言したことにより、新しい衣類に対する反対の声は減少した。

 Eman Joharjyのようなデザイナーらは、正式な法令が発表されるまでは、ますます人気度を伸ばしている、スポーツ・アバヤと呼ばれる衣装に期待をしている。ドレスコードと純潔さを直結させる伝統的な考え方に反対する女性が多いからだ。

「とても需要があります」とJoharjyはジッダにあるアトリエでAFPの取材に対し話した。「様々な色で展開することで活力が得られます」

 ジッパー付きジャンプスーツの様な形をしているスポーツ・アバヤは、女性の体を包み込む反面、裾につまずく可能性が高い伝統的なゆるやかなアバヤとは違い、何よりも動きやすさに特化している

 Joharjyがデザインするアバヤは、王国の灼熱の気候の中でもより快適に過ごせるピスタチオグリーン、ベージュや白といった色で展開。使用される素材も、汗ばんだ体にまとわりつかないフレンチ・ポプリンだ。

 このトレンドをいち早く取り入れた人物の一人であるJoharjyは、スポーツ・アバヤをデザインし公共の場で着用し始めた2007年、社会的異常者の烙印を押され、“バットマン”となじられることもあった。

「少しだけ反逆心はあったけれども、実用性があるから自分のためにデザインしたもの」だと彼女は説明する。「ジッパーを上げるだけで準備完了」