【4月19日 AFP】米英仏がシリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権に対して行った軍事攻撃は、決して「シリア人を残虐行為から救う」ためではなく、国際社会における「威信」を回復しようとしただけにすぎない──反体制派の代表的な研究者・著作家がAFPのインタビューに見解を語った。

 ヤシン・アル・ハジ・サレハ(Yassin al Haj Saleh)氏(57)は、アサド大統領の父親ハフェズ・アサド(Hafez al-Assad)氏が大統領だった1980年に反逆容疑で逮捕され、1996年まで投獄された経歴を持つ。2013年にシリア脱出に成功し、現在はドイツ在住。独ベルリン高等研究所(Berlin's Institute for Advanced Study)で大量虐殺に関する研究を行う傍ら、アラビア語圏の新聞各紙に寄稿している。

 サレハ氏は今週、著書「The Impossible Revolution: Making Sense of the Syrian Tragedy(不可能な革命:シリアの悲劇を読み解く)」のスペイン語版の出版に合わせて訪れたマドリードでAFPの取材に応じ、米英仏が14日に行った対シリア軍事攻撃について次のように語った。

「われわれ(シリア人)の問題ではない。われわれの命を守るものでも、シリア人を残虐行為から救い出すものでもない」

「(英米仏は)同盟国を守り、威信を少しばかり回復し、(アサド政権を支援する)ロシアや、ひいてはイランに対して怒りを表明したいだけだ」

 米英仏は、シリアの首都ダマスカス近郊で反体制派が支配していた東グータ(Eastern Ghouta)のドゥーマ(Douma)で化学兵器を使ったとみられる攻撃により40人以上が死亡した事態を受け、シリアの化学兵器開発施設と貯蔵施設とされる標的にミサイル攻撃を行った。

 しかし、サレハ氏は「『おとなしくしろ、われわれの引く一線を越えるな。そうすればお前は権力の座にとどまれる』というのが今回の攻撃の教訓だろう」と指摘。「『われわれ(欧米)にはシリア政府との間に問題はない。シリア政府が化学兵器を使用したことが問題なのだ。さあ、たる爆弾でも拷問でも、いくらでも他の方法で殺し続けるがいい』(と言っているようなものだ)」と続けた。

 サレハ氏は、シリアのアサド政権に責任を取らせるという点においては「米政権にも(エマニュエル・)マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領にも、その他の国の政府にも一切、期待はしていない」と語った。

 サレハ氏の妻は人権活動家で、2011年に始まった反体制派の蜂起で中心的な役割を果たした4人のうちの一人として知られている。だが、4人は東グータ最大の町ドゥーマで2013年12月に何者かに拉致され、それきり行方が分かっていない。7年に及ぶシリア内戦では、これまでに35万人以上が死亡し、数百万人が家を追われて避難生活を送っている。(c)AFP/ Álvaro VILLALOBOS