【4月19日 AFP】米フロリダ州で18日行われた日米首脳会談の2日目、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は報道陣のカメラの前で、安倍晋三(Shinzo Abe)首相に通商問題での譲歩を強く迫った。安倍首相は押し切られた格好で、新たな貿易協議の開始に合意した。

 安倍首相は会談後の共同記者会見で、「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意した」と述べた。ただ、トランプ大統領が求めている二国間での自由貿易協定(FTA)に関しては言質を与えなかった。

 一方、トランプ氏は会見で「TPP(環太平洋連携協定)に復帰したくはないが、米国の代表として拒めない待遇を提示されるのならば復帰してもいい」と発言。「だが、二国間の方が好きだ。その方が米国にとっても良いと思う。わが国の労働者にとっても良いことなので、私は二国間協定を選ぶ」と述べた。

 この数か月間、安倍首相はトランプ氏からの二国間協議開始の要求をはねつけてきた。しかし、トランプ氏は自身がフロリダ州に所有する高級リゾート施設「マーアーラゴ(Mar-a-Lago)」での会談の席上、カメラの前で安倍首相に遠慮なく直接対決を挑んだ。

「首相もご存知の通り、彼らは米国と非常にうまくやっている。われわれは巨額の赤字を抱えている」とトランプ氏は切り出した。その上で、日米の「関係は非常に良いものだ」と強調しつつ、外交辞令を捨てて「自由で公正、かつ互恵的」な貿易関係を築くためもっと努力するよう安倍首相に要求した。

 トランプ氏は、対日貿易赤字が膨らんでいることを重ねて指摘。日本からの旅客機や戦闘機の注文が赤字削減につながる可能性があると述べながら、続いて不公平な貿易慣行を強く非難した。

「『互恵的』というのは、こういうことだ。日本が車を(米国に)入荷させるとき、米国は関税を課すが、わが国が日本に車を輸出しようとすると、それは認められていない。われわれはこの障壁を取り除き、同じように関税を払わなければならない」とトランプ氏は語った。

 トランプ氏は、二国間協議の方が、農業や自動車市場の開放といった日本政府にとって重要な政治問題により鋭く切り込めるとみている。また、鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税の対象から同盟国を除外する際、日本は除外しなかった。

 今回の無遠慮な会談は、トランプ政権下での「米国第一」主義の強化と貿易不均衡の是正を約束された米国内のトランプ氏支持者に直接訴えるものだ。

 トランプ氏は「今回の会談は私にとって、非常にエキサイティングなものだった。気に入った。最高だったんじゃないか。私は金融や経済の世界が大好きだ。おそらく私が最も得意とする分野だろう」と自画自賛し、自らのビジネスの資質をアピールした。(c)AFP/By Jerome CARTILLIER, and Andrew Beatty in Washington