【4月18日 AFP】中国で人気の伝統薬用酒「鴻茅薬酒(Hongmao Medicinal Liquor)」を「毒薬」などと評した医師が訴追手続きもないまま3か月間も警察に逮捕・勾留され、同国の医学界に怒りが広がっている。

 地元メディアによると、勾留されていたのは広州(Guangzhou)の医師、譚秦東(タン・チンドン、Tan Qindong)氏。譚氏は昨年12月、鴻茅薬酒は有毒だと評する記事を発表し、内モンゴル自治区(Inner Mongolia)の鴻茅薬酒生産会社から苦情申し立てが出されていた。

 鴻茅薬酒は年長者に人気がある薬用酒。関節痛や冠動脈性心疾患を治癒すると生産者側はうたっている。だが、譚氏がこの主張に疑問を投げ掛けたところ、1月10日に自宅のある広州市南部から2300キロ以上も離れた内モンゴル北部から訪れた警察に連行され、訴追もされないまま内モンゴルの刑事施設に3か月間拘留された後、釈放された。

 これを受けて中国医師協会(Chinese Medical Doctor Association)は今月16日、譚氏の勾留を非難する声明を発表。中国政府に多様な学術的意見について慎重な対処を求め、民事紛争を犯罪と見なすべきではないと訴えた。

 中国伝統医学は中国の巨大な国内産業だ。国営新華社(Xinhua)通信によると2016年度の産業規模は1300億ドル(約14兆円)を超える。

 だが伝統医学の有効性を保証する臨床試験は十分ではなく、臨床試験の実績や学術論文に基づいた医薬品を支持する医師らと伝統医学の支持者らの間で争いが絶えない。(c)AFP