【4月17日 AFP】(更新)タイで17日、「性的なトレーニング講座」を行っていたとして逮捕されたベラルーシ出身のモデルの女、および「セックスコーチ」を自称するロシア出身の男が、裁判所に出廷した。被告らは、2016年の米大統領選におけるロシア介入疑惑に関する秘密を握っていると主張しており、注目が集まっている。

 タイ警察は今年2月、沿岸都市パタヤ(Pattaya)にあるホテルで開催された「性的なトレーニング講座」に対して強制捜査を実施。「ナスチャ・リブカ(Nastya Rybka)」というペンネームで知られるアナスタシア・ワシュケビッチ(Anastasia Vashukevich)被告と「セックスマスター」を自称するアレクサンドル・キリロフ(Alexander Kirillov)被告ら計10人を逮捕した。

 パタヤ警察の署長によると被告らは当初、労働許可を取得していなかったために起訴されたが、現在は売春助長行為および共謀罪にも問われているという。

■米選挙について「話す用意がある」

 ロシアで政治スキャンダルの渦中にある両被告は、逮捕直後にワシュケビッチ被告がインスタグラム(Instagram)に投稿した動画で、米国人ジャーナリストらに秘密を暴露すると申し出たことにより、世界中のメディアが注目。

 動画の中でワシュケビッチ被告は「彼らは私たちを刑務所に入れようとしている…だから私は、あなた方が手にしていない、欠けたままのパズルのピースすべてについて話す用意がある…ロシアの有力議員と(ポール・)マナフォート(Paul Manafort)、それから(ドナルド・)トランプ(Donald Trump)との関係、そして一連の大騒動、米選挙について」と語った。

 マナフォート被告は2016年の米大統領選へのロシア介入をめぐる捜査で、資金洗浄(マネーロンダリング)と税関連の罪で起訴されている。

■ロシア新興財閥との関係

 一方、新興財閥(オリガルヒ)を誘惑する方法に関する著書があるワシュケビッチ被告は、自らの主張を実証してはいないが、ロシア・エリート層との関係を持っているのは確かだ。

 ワシュケビッチ被告が撮影したとされる動画には、ロシアの富豪オレグ・デリパスカ(Oleg Deripaska)氏が所有するヨットでセルゲイ・プリホチコ(Sergei Prikhodko)副首相兼官房長官が歓待を受ける様子が捉えられている。ワシュケビッチ、キリロフ両被告はこの動画をめぐりロシア国内で裁判にかけられている。

 アルミ大手会社の社長であるデリパスカ氏は、かつてトランプ陣営の選対本部長を務めたマナフォート被告とつながりがあり、米政府はデリパスカ氏がロシア政府のために動いた可能性を指摘している。

 この動画は、政権批判の急先鋒(せんぽう)に立つ同国の野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が今年2月に公開して以来、広く拡散している。

 ワシュケビッチ被告は17日、他の被告らと共にパタヤの裁判所に出廷する際、警察車両の中からAFPの取材に応じ「私たちはロシアには戻らない。私たちに対し、新たな刑事捜査が開始されているから」と答えた。

 また米国に対しメッセージがあるかと質問を受けたキリロフ被告は「いずれにしても助けてほしい、何が起こっているか分からないから」と答えた。

■起訴の背後には「米国」と主張一転

 同日、行われた不法就労に関する両被告の罪状認否ではメディア関係者の傍聴は認められず、司法当局者もコメントを拒否した。

 だが罪状認否の後、被告らが警察車両へ戻る際、ワシュケビッチ被告は報道陣に対して、今回の起訴の背後でロシア政府が動いていると当初考えていたことは「間違い」だったと発言。「私たちを刑務所に入れようとしているのはロシアではなく、米国だ」「彼らはなぜ、私たちが持っている情報をタイで米国人に暴露するのを防ごうとしているのか?」と述べた。

 在バンコクの米国大使館は本件について、コメントを繰り返し拒否している。(c)AFP/Joe FREEMAN