【4月20日 AFP】コーヒーが飲みたくて死にそうという人が本当にくつろげるカフェがタイの首都バンコクに新しくオープンした。テーマカフェが大流行する中、ここは死をテーマに仏教のエッセンスを加えた「死を意識する」カフェで、訪れる人々に死に向き合ってもらい、その結果としてより良い人生を送ってもらいたいというのがコンセプトだ。

「死」や「苦」と名付けられたドリンクメニューや、店の一角の長椅子にのびのびと座る骸骨。「キッド・マイ・デス・カフェ(Kid Mai Death Cafe、死を新たに考えるカフェ、の意)は開放的で昼食を取るのにピッタリなカフェで、「死」というテーマが生き生きとしている。

 カフェの目玉は、装飾された白いひつぎだ。客たちはひつぎに入って数分間横になり、自分の最期についてじっくり考えるといい。こうすると飲み物が割引になる。

 バンコクには猫や犬、ミーアキャットとさえ触れ合うことができるカフェから、ユニコーンや人魚をテーマにした飲食店など何でもある。だが、このカフェは単に凝った店だとか、バンコクによくあるかわいらしいカフェを暗くしたバージョンだという以上のものがあるとオーナーは言う。

 大学教授で研究者のベーラヌット・ロジャナプラパ(Veeranut Rojanaprapa)氏は、国民の約90パーセントが自分は仏教徒だと認識しているタイで、人々に「死を意識する」ことの利点を教える一手段としてこのカフェを考案した。

「死を意識することで、欲や怒りが減ることを我々は発見した」。そう言いながらくすくすと笑う同氏からは、彼がより暗い物事に魅惑されていることが伝わってくる。

 無常や無私無欲の考えに基づいた仏教の概念は、慢性的な暴力や汚職などの問題からタイ社会を解放するカギになると、ベーラヌット教授は信じている。「人は自分の死について意識したとき、善い行いをするようになる。これこそ仏陀(ぶっだ)が説いたことだ」

(c)AFP/Anusak KONGLANG and Sally MAIRS