【4月22日 AFP】目以外の顔を覆い隠すイスラム教徒の女性用のニカブを着用したメルバト・ブクハリ(Mervat Bukhari)さん(43)は、侮辱的な言葉や嘲りにひるむことなく、サウジアラビアの女性として初めて同国のガソリンスタンドで働き始めた。少し前なら考えられないことだ。

 かつては女性のわずかな自由さえ保守派に抑制されていたこの王国では今、近代史上最大の文化的大改革が進められている。ムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子の号令で始まったこの改革には、女性に対して車の運転(今年6月に解禁)やサッカー試合の観戦、伝統的な男女の役割分担という狭い範囲に収まり切らない職業への従事を認めるなどの歴史的な決定が含まれている。

 しかしブクハリさんたちが直面してきた反発は、女性が「目に見える存在になる」ことに慣れていない国で、女性に対するエンパワーメントがいかに社会的な避雷針になり得るかを物語っている。

 昨年10月、4人の子どもの母親であるブクハリさんが同国東部の都市ホバル(Khobar)にあるガソリンスタンドの主任に昇進すると、国内のソーシャルメディアには「サウジ女性はガソリンスタンドで働くな」というハッシュタグ付きの中傷があふれ始めた。

 以前は親会社でもっと下の立場で働いていたブクハリさんは、現在は管理職に就いているのであって、ガソリンスタンドで実際に給油ノズルを扱っているわけではないと反論し、弁解姿勢を取らざるを得ない状況に追い込まれた。

「私は主任なのです。私がガソリンを給油するわけではありません」。階級意識の強いサウジ男性が見下す仕事の社会的地位を少しでも向上させようと考えているブクハリさんはこう説明し、「女性は今日、どんな職業にも就ける権利を持っているのです」と続けた。

 ムハンマド皇太子が進めるポスト石油時代のための改革計画「ビジョン2030(Vision 2030)」では、労働人口における女性の割合を現在の約22%から約30%に引き上げる目標が掲げられている。