【4月16日 東方新報】手話ができる弁護士の動画が、中国のインターネット上で最近、特にろうあ者の間で話題になっている。一夜にして有名になった「手話弁護士」のもとには、各地のろうあ者から法律に関するさまざまな悩みや相談が寄せられているという。

 重慶市(Chongqing)の法律事務所に在籍する唐帥(Tang Shuai)弁護士は、両親がいずれもろうあ者だったため、幼い頃から手話を自然に身につけた。

 手話には、ろうあ学校で使用する「共通手話」と、日常で使用する「自然手話」が存在する。両者の違いが裁判の中で障壁になっていることを目の当たりにしたことがきっかけで、唐弁護士は「手話弁護士」の道を歩むことになった。

■共通手話と自然手話の差が、ろうあ者を不利な立場に

 ろうあ者に広く使われているのは「自然手話」だが、法廷の手話通訳者はろうあ学校の教師が多いことから、「共通手話」が使われる。両者の違いが原因で、意思の疎通がうまく行かないことが多々あるという。

 また、法律の専門用語も多い。ろうあ者に法律の知識を説明する必要があるが、手話通訳者は法学部出身者ではない場合が多いため、ここでも問題が生じる。したがって、ろうあ者の権利や義務がきちんと明確にされているとは言い難いのが現状だという。

 唐弁護士が法律の世界に入るきっかけとなった出来事は、盗みの疑いをかけられた、あるろうあ者の女性の取り調べの動画を見た時だった。女性は必死に、「盗んでいない」と「自然手話」で訴えていたが、手話通訳を介した結果、「私は金色のiPhoneを1台盗みました」と通訳されてしまっていた。