【4月14日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は13日、中央情報局(CIA)工作員の身元漏えい事件をめぐり連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をしたとして有罪判決を受けたルイス・リビー(Lewis Libby)元副大統領首席補佐官に対し、恩赦を与えた。野党の民主党は恩赦について、ロシア疑惑の捜査に協力する証人たちに対して、司法妨害をすれば褒美が与えられるというメッセージを送るものだと批判している。

 リビー氏は、ジョージ・W・ブッシュ(George W Bush)政権でディック・チェイニー(Dick Cheney)副大統領の首席補佐官を務めた人物。トランプ大統領は「リビー氏のことは知らない」とした上で、「長年不当に扱われてきたと聞いている」と説明。「この完全な恩赦が、彼の人生の非常に悲しい部分を正す助けになるよう願っている」と述べた。

 リビー氏の起訴につながった事件では、2003年7月、ブッシュ政権がイラクの脅威を誇張していると批判していた外交官の妻で、CIA工作員だったバレリー・プレイム(Valerie Plame)さんの身元が報道機関に流出。リビー氏には漏えいの容疑はかけられなかったが、捜査期間中に虚偽の供述をしたとして起訴された。

 リビー氏に対しては2007年、偽証、司法妨害、捜査官への虚偽供述の罪で禁錮2年6月の有罪判決が言い渡されたが、ブッシュ元大統領は後にリビー氏の減刑を決定。一方で恩赦は拒否したことから、チェイニー氏との間に不和が生まれていた。

 民主党はトランプ大統領による恩赦の決定を直ちに批判。2016年米大統領選でのロシアによる干渉とトランプ陣営との共謀疑惑、さらにはトランプ政権による司法妨害の疑いをめぐるロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官の捜査に悪影響を与えかねないと指摘している。

 下院民主党トップのナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)院内総務は、今回の恩赦は「大統領の側近らに対し、司法妨害をすれば褒美が与えられる、という問題ある合図を送る」ものだと批判。「宣誓証言でうそをついても、恩赦が与えられることが示されれば、特別検察官の捜査の健全性や、われわれの民主主義に対する脅威となる」とした。(c)AFP/Andrew BEATTY