(※この記事は、2018年4月13日に配信されました)

【4月13日 AFP】ゾウ、トラ、ライオン、ジャイアントパンダといった象徴的な動物は、映画や本、玩具などの至る所に登場する。しかし、大衆文化におけるこうした幅広い露出によって、これら動物が実際に直面している絶滅危機に関する人々の認識がゆがめられているとする研究結果が12日、発表された。

 今回の研究で米国とフランスのチームは、一般的に人気のある動物を調べるために、オンライン調査、動物園のサイト、アニメ映画、学校でのアンケート調査などを当たった。研究論は、米オンライン科学誌プロス・バイオロジー(PLOS Biology)に発表された

 研究チームはこれらの情報源を用いて上位10種のリストを作成した。上位10位に入る動物は、トラ、ライオン、ゾウ、キリン、ヒョウ、パンダ、チーター、ホッキョクグマ、ハイイロオオカミ、ゴリラの10種だ。

 インターネット通販最大手の米アマゾン・ドットコム(Amazon.com)が米国で販売しているテディベア以外の動物のぬいぐるみでは、これら人気上位10種の動物が全体の49%近くを占めていることが、今回の調査で明らかになった。

 フランスでは、赤ちゃん玩具「キリンのソフィー(Sophie the giraffe)」の2010年の販売総数が80万個に上ったが、これはアフリカに生息しているキリンの個体数の8倍以上だ。

 論文の主執筆者で、仏パリ大学(University of Paris)のフランク・コーチャンプ(Franck Courchamp)氏によると、これらの動物は大衆文化や宣伝材料などに非常に広く使用されているため、人々の頭の中に動物の「仮想の個体群」が形成され、現実よりもはるかに良好な状態にあるという認識が生じるのだという。

「販売促進の目的でキリン、チーター、ホッキョクグマなどを使用している企業は知らないうちに、これらの動物が絶滅の危機にはなく、したがって保護の必要もないという誤った認識を助長している可能性がある」と、コーチャンプ氏は指摘した。

 研究チームは動物をマーケティング目的で使用している企業に、利益の一部を自然保護団体に寄付するよう呼びかけている。

 論文の共同執筆者で、米オレゴン州立大学(Oregon State University)のウィリアム・リップル(William Ripple)教授(森林生態学)は「これらの動物を救うために人々が協力して対処しなければ、近い将来に映画やテレビなどの世界でしか動物を目にすることができなくなる可能性がある」と話す。

 そして、「ほぼ全ての動物が直面している重大な脅威は、人による直接的な殺傷行為、特に狩猟やわなによる殺害だ」と続け、こうした現実を「これらは世界で最も愛されている動物たちでもあるのに…悲しいほど皮肉な話だ」と指摘した。(c)AFP