【4月30日 AFP】毎年秋になると、中国の最西部に住むパキスタン人商人らは、中国人の妻たちにひと時の別れを告げる。古代シルクロード(Silk Road)の一部だった山深いカラコルム・ハイウエー(Karakoram Highway)をたどって国境を越え、自国で冬を過ごすためだ。

 雪が積もる頃、男たちは離れ離れになった妻たちと電話で連絡を取り合う。だが昨年、そのような電話の多くが突然通じなくなった。

 後に男たちは、中国に残してきた家族が、イスラム系少数民族ウイグル人を排除するための謎に包まれた「再教育収容所」に送られたことを知った。「妻と子どもたちは昨年3月、中国当局に連れ去られた。それ以来、家族とは連絡が取れていない」とイクバルさんは語った。

 昨年7月、イクバルさんは家族を見つけるために中国へ向かったが、国境で追い払われた。イクバルさんはAFPに対し、中国当局者から「妻は『訓練』を受けており、子どもたちの世話は政府がみている」と言われたと説明した。

 中国・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)と国境を接するパキスタンのギルギット・バルティスタン(Gilgit-Baltistan)州の議員、ジェイブド・フセイン(Javed Hussain)氏によると、ビザやビジネス上の理由でパキスタン側に戻り、中国に住むウイグル人の家族と連絡が取れなくなった男性は州内に多数いるという。

 そうした多数のパキスタン男性の場合と同様、イクバルさんの家族も中国・パキスタン経済回廊(CPEC)沿いにあるウイグルの古都カシュガル(Kashgar)に住んでいた。

 中国は近年、パキスタンとの関係強化に力を入れており、インフラ事業であるCPECに何百億ドルもの資金をつぎ込んでいる。だが、中国は開発の野望と、ウイグルの分離独立派がパキスタンから暴力を国内に持ち込むのではないかという恐怖の間で折り合いをつけることに苦心している。