【4月14日 AFP】まだ幼かったエマン・スラエマン(Eman Sulaeman)さんがサッカーをやらせてほしいと頼むと、両親は心配した。片足の膝から下がない状態で生まれてきた彼が、からかわれはしないかと心配したのだ。

 けれど、それから20年が経った今、30歳になったインドネシア人ゴールキーパーは、ネコのような反射神経で国内外の観衆をわかせている。そして障害のある人々に向かって力強いメッセージを送っている。

「ボールを買ってくれと言って、何日間も泣き続けたんだ」。インドネシアの首都ジャカルタから約220キロ離れた小さな町、インドラマユ(Indramayu)で最近行われたフットサルの試合を取材したAFPに彼は語った。「親たちはついに折れて、僕に安いプラスチックのボールを見つけてくれたんだ」

 フットサルコートには、スラエマンさんのファンが大挙して押しかけている。試合終了の笛が鳴り、スラエマンさんが相手チームのゴールの後ろへ向かって大きくボールを蹴り出すと、歓声は叫び声に変わった。スラエマンさんのチームの勝利だった。外では若いファンがヒーローと一緒にセルフィーを撮ろうと待ち構えていた。

 イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)の元ゴールキーパー、エドウィン・ファン・デル・サール(Edwin Van Der Sar)と、スペイン1部リーグのレアル・マドリード(Real Madrid)のスター、クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)の大ファンのスラエマンさんにとって、ここまで来ることは容易ではなく、不断のトレーニングを必要とした。「ボールを蹴ることができるようになる前に、バランスを取って歩くことを覚えるのに長い時間がかかった」