■万人のための教育を

 フランスでは3月、マクロン大統領の入学者選抜計画に反対する学生らが国内数か所の公立大学の校舎を占拠した。

 現在、大学入学資格試験「バカロレア」に合格した生徒はどの大学にも入学できるが、現政権は大学が過密状態であることや、4年で学位を取得できない学生が60%に上ることを問題視している。

 昨年にはこの問題が危機的状況に達し、志願者が定員を超えた数十の講座でくじ引きによる抽選が行われ、数千人もの学生が希望した講座を受講できない事態となった。そのため公立大学には、「志望動機」や「成績」がその大学の講座に合致する生徒を選抜できるよう、生徒の学業成績記録の閲覧許可が与えられることになっている。

 1968年のデモの火付け役となったパリ西部のナンテール大学(Nanterre University)で経済学を専攻しているフロリアン・マゼ(Florian Mazet)さんにとっては、こうした改革はフランスの価値観に対する裏切りに他ならない。

「フランスには、自分たちの願望に基づいた社会モデルがあり、そこには自分が選択したものを学ぶ権利も含まれます」と話すマゼさん。法律や心理学といった人気の高い講座では、大学側は学業成績がトップクラスの生徒たちばかりを主に受け入れ、貧困地域出身の若者たちは脇に追いやられてしまうのではないかとマゼさんは心配する。

 フレデリック・ビダル(Frederique Vidal)高等教育・研究相は、学力の低い生徒には新たな入学最低要件に届くよう補習授業を実施するとしているが、約400人の教師が公開書簡で、同相が約束した10億ユーロ(約1300億円)の予算が拠出される兆候は今のところまったくないと述べている。

 学年末試験が目前に迫る中、数校の大学校舎は過激さを増すデモ隊によって今も閉鎖されており、緊張の度合いが増している。9日には、機動隊がナンテール大に踏み込み、座り込みを行っていた数十人の学生を排除。少なくとも学生1人が負傷し、7人が逮捕された。

 またソルボンヌ大学の学長は11日、先週末に火炎瓶が見つかったパリ東部の学部で、学生支援者と座り込みに反対する人々との間で衝突があったことを受けて、警察に支援を要請した。

 モンペリエ(Montpellier)やトゥールーズ(Toulouse)、ボルドー(Bordeaux)、ストラスブール(Strasbourg)、レンヌ(Rennes)などの都市の大学でも、校舎の一部またはすべてが閉鎖されている。(c)AFP/Clare BYRNE