【4月11日 CNS】中国財政部は4日、米国が原産地の大豆などの農産品に対して25%の関税をかけると発表した。

 特筆すべきは、この前日に中国は2018年の重点的な財政施策として、「強農恵農(農業を強化し、農村に恵みを)」政策を発表したことだ。

 東北三省(遼寧(Liaoning)、吉林(Jilin)、黒竜江(Heilongjiang)の各省)と内モンゴル(Inner Mongolia)で、トウモロコシと大豆の生産者に対する補助金制度が設けられ、大豆の補助金はトウモロコシよりも高く定められるという。

 一方では、米国産大豆の関税を上げ、一方では国内の大豆生産を後押しするということだ。米中間の貿易の駆け引きの中で、大豆という切り札を切った中国の本気度が伺える。

 ではどうして大豆なのか。中国は近年、米国産大豆の最大の輸入国であり、比率も年々上昇していた。中国国家統計局のデータによると、2010年には2359万7000トンだった米国産大豆の輸入量は、17年には3285万6000トンに増え、増加率は39.2%だった。また、17年の米国産大豆の輸出量は、中国向けが57%を占めた。

 中国人民大学(Renmin University of China)農業・農村発展学院の孔祥智(Kong Xiangzhi)教授は、「中国が米国産大豆に手をつければ、米国産大豆が生み出す利益に直接の影響が出る。米国政府は、大豆農家の圧力により対中国の保護主義貿易の手を緩めるかもしれない」と話す。

 現在、中国は大豆の85%以上を輸入に頼っている。2014年に大豆の目標価格を定める方法で改革を試みたが、目立った効果を得られず、17年に大豆の目標価格政策を取り消し、トウモロコシと同様に市場化や補助金などの措置を採用すると発表していた。

 中国社会科学院(Chinese Academy of Social Sciences)農村発展研究所の李国祥(Li Guoxiang)研究員は、「補助金政策の実施後、トウモロコシは価格が回復し、市場効果も良好だ。大豆の場合も同様に、生産が積極的になり、生産の質と利益が向上し、栽培面積が拡大すれば、国内の自給能力を高めることができるのでは」と見ている。

 中国人民大学の孔教授は、「補助金制度は国内の大豆生産の効率と競争力を高める」と話すが、中国の大豆生産率は国際水準と比較すると、依然としてかなり差が開いている。輸入大豆のプレッシャーにより、中国の大豆産業は悪循環に陥ってしまい、自力で発展することが難しくなってしまった。

 中国社会科学院の李研究員は、「輸入量の多さが、国内の大豆産業が衰弱してしまった主な原因だ」と分析する。対米国産大豆への追加関税は価格の高騰を招くが、長期的には国内の大豆産業の発展に効果がある。

 孔教授は、「国内の大豆産業を発展させるためには、補助金だけでなく技術の向上も重要な鍵だ。大豆の収穫量は、中国は単位面積あたり300キロなのに対し、米国は500キロ。この差を縮めることが肝心だ」と話す。

 今回の追加関税が大豆の供給量不足を引き起こすのではという懸念に対し、李研究員は、「現在の技術レベルであれば大豆の供給量は需要を満たすことができるし、米国以外にもブラジルやアルゼンチン、また価格は多少高くなるが中東や中央アジア、ロシアからも輸入が可能だ」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News