【4月10日 AFP】ファッションデザイナーのエディ・スリマン(Hedi Slimane)がラグジュアリーグループ「ケリング(Kering)」を相手取った訴訟で裁判所は、「ケリング」に930万ユーロ(約12億2100万円)の支払いを命じた。「ケリング」の広報担当者はAFPの取材に対し、この判決を上告するとしている。

 AFPが6日に入手した裁判記録によると、スキニージーンズで有名となり「スキニーの皇帝(Sultan of skinny)」として知られるスリマンは、仏レーベル「サンローラン」を任されていた昨年、契約上の報酬1000万ユーロ(約13億1400万円)の内66万7000ユーロ(約8800万円)しか支払われていないとされている。

 ファッション界において、最も旬で才能溢れる謎めいたデザイナーの一人であるスリマンは2016年、「サンローラン」のオーナーである「ケリング」と泥沼の話し合いの末決別。その後スリマンは、「ケリング」の競合であるラグジュアリーグループ「LVMH」の「セリーヌ(CELINE)」のアーティスティック・ディレクターの座に就いた。彼は同ブランドを一新させるため、メンズラインも始める。

仏パリで開催された記者会見で、社名を「PPR」から「ケリング」に変更すると共に新たなロゴを披露した際に撮影された写真(2013年3月22日撮影)。(c) AFP PHOTO / ERIC PIERMONT

 今回の判決の2年前にも仏パリの裁判所は「ケリング」に対し、スリマンの契約に記載された競業避止に関する条項を巡り1300万ユーロ(約17億800万円)の支払いを命じている。「ケリング」はこの判決にも上告している。

 スリマンによるスキニーとシックなロックスタールックは、「ディオール(Dior)」と「サンローラン」に大きな売り上げをもたらし、多くの大衆ブランドがそのスタイルを真似た。

「シャネル(Channel)」を手掛けるカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)も、スリマンのスキニージーンズを着用するために41キロのダイエットをしたのは有名な話だ。

 ラガーフェルド同様、スリマンは写真家としても有名。彼は「サンローラン」を去る際にスタジオを米ロサンゼルスに移し、ここ7年はロサンゼルスを拠点としている。

 デザイナーはロサンゼルスのロックシーンから多くのインスピレーションを得ており、それを写真とブログを通して記録し続けている。

 人目に触れるのを嫌い謎に包まれているスリマンだが、レディー・ガガ(Lady Gaga)など、多くの有名人を親友に持つ。

 友人であるロックバンド、ザ・リバティーンズ(The Libertines)のメンバー、ピーター・ドハーティ(Peter Doherty)をミューズとし、2006年にリリースした写真集「LONDON BIRTH OF CULT」にも登場させた。

 パリで移民の家族に生まれたスリマン。父親はチュニジア出身のボクサーで、その後、イタリアの仕立屋だった母親の会計士となった。(c)AFP