【4月6日 AFP】英政府は5日夜、毒殺未遂の被害に遭った元二重スパイのロシア人男性セルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏が自宅で飼っていたペットについて、猫1匹とモルモット2匹が死んだことを明らかにした。これに先立ちロシア政府は、ペットの安否情報を隠していると英国側を非難していた。

 スクリパリ氏は3月4日、英イングランド南西部ソールズベリー(Salisbury)で娘のユリア(Yulia Skripal)さんと共に神経剤による襲撃を受けた。英国はロシアの関与を主張。この事件が引き金となり、欧米諸国とロシアが外交官の追放合戦を繰り広げる事態に発展している。

 しかし、これまで世間の注目は被害者2人の容体と世界的な外交危機に集中しており、事件発生から1か月を迎えた今週になってロシア側が指摘するまで、ペットがどうなったのかが話題に上ることはなかった。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ(Maria Zakharova)報道官は4日、「ペットたちはどこにいるのか、どんな状態なのか? なぜ英国側はこの事実に言及しないのか。われわれが話題にしているのは生き物だ。もし毒物が使われたのなら、生き物は影響を受けているはずだ」と述べ、懸念を表明した。

 これに対し、英環境・食料・農村省の報道官は「獣医師が(スクリパリ氏の)住居に入れたときには、悲しいことにモルモット2匹は死んでいた」とAFPに語った。猫1匹はひどく苦しんでいる状態で発見され、「この猫にとっての最善の利益と幸福のため」獣医師の判断で安楽死させたという。

 英警察の対テロ部隊によると、スクリパリ氏とユリアさんが最初に神経剤に接触したのは自宅で、最も高濃度の残留物が検出されたのは表玄関のドアだったという。

 英大衆紙サン(The Sun)は英政府関係者の話として、スクリパリ氏の飼い猫は名前をナッシュ・バン・ドレイク(Nash Van Drake)といい、近隣ポートンダウン(Porton Down)の英軍事施設に運ばれて、そこで安楽死させられたと伝えた。この猫とモルモットの死骸は火葬されたという。

 在英ロシア大使館は先に、スクリパリ氏が猫を2匹飼っていたとの情報に言及していたが、英政府はもう1匹の猫の行方については触れていない。(c)AFP