【4月5日 AFP】米国の公民権運動を主導したマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)牧師の暗殺後に米ワシントンD.C.の一部が暴動に飲み込まれた際、リック・リー(Rick Lee)さん(75)は、家族で経営していた花屋の店先に「ソウルブラザー」と書き、散弾銃を片手に夜を明かした。

 1968年4月4日、公民権運動の象徴的人物であるキング牧師が、米テネシー(Tennessee)州メンフィス(Memphis)で白人至上主義者によって射殺されてからわずか数時間後、ホワイトハウス(White House)から北へ約3キロにも満たない場所で最初の暴動が発生した。

「マーティン・ルーサー・キングが撃たれ、皆が町に火を付け始めたと聞くやいなや、私はこの花屋に走った」「母や店が無事か、確かめるために」。AFPの取材に応じたリーさんは、今は娘が経営しているUストリート(U Street)にある花屋で50年前のこの日を振り返った。

 放火を始めたのが誰かは不明だったが、「おそらく黒人だろうと、私たちは思った。なぜなら、黒人たちはマーティン・ルーサー・キングが撃たれて逆上していたから」

「私たちは、ここが黒人が経営する店であることを知らせるために、窓に『ソウルブラザー』と表示した。誰かを焼き払いたいのなら、身内はやめろというつもりだった」

「私たちは、ここで夜を明かした。うちには散弾銃があった。それが何の役に立ったか分からないが、とにかくもしものための準備はできていた。幸い、何の問題も起きなかった」

 リーさんによれば、「ソウルブラザー」という表示は店を守るのに役立ったかもしれないが、確かなことは分からないという。

 幸運に恵まれなかった人々もいた。暴動により、13人が犠牲となり、数百万ドル(数億円)の損害が発生した。州兵の支援により秩序が回復するまでに、通りは焼き尽くされ、店舗は略奪された。