【4月18日 AFP】マレーシア北部で、1匹のブタオザルがひもでつながれたココナツを引っ張っている。見事にココナツを地面に落としたこのサルは、農家で果物の収穫を手伝うサルを訓練する学校の「生徒」だ。

 この小さな村で、40年ほどにわたり数千ものサルの訓練に当たってきたのが「ワンおじいさん(Grandfather Wan)」こと、ワン・イブラヒム・ワン・マット(Wan Ibrahim Wan Mat)氏(63)だ。

 少額の料金でサルに訓練を受けさせようと、国内各地からこの有名施設にサルが送られてくる。サルは細い鎖につながれ、ヤシの木によじ登ってココナツを収穫することを教え込まれる。

 この訓練が残虐だとして、過去に動物保護団体から抗議を受けたこともある。しかしワン・イブラヒム氏は、教え子たちを優しく扱っていると主張する。

「彼らは私の子どものようだ」と同氏が話す傍らでは、サルたちが甲高い声を上げながら、動き回っている。訓練所には、サルが登るためのヤシの木や使い古された木製の台が置かれている。

 熱帯のマレーシアでは年間7億個のココナツが生産され、大規模なビジネスとなっている。小自作農家が多く、一部の農家は重労働な収穫作業にサルの手を借りている。

 腕利きの人と同じスピードでココナツを収穫できるようになるには、サルによって数日でできる場合もあれば、1か月かかることもあるとワン・イブラヒム氏は話す。

 訓練を終えたサルは日に最高800個のココナツを収穫することができ、訓練にかかる費用150リンギット(約4100円)のもとは十分取れるという。(c)AFP/Patrick Lee