【4月3日 AFP】ロシアで2日、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した生後5か月の女児の死亡に関する捜査が開始された。女児の母親はHIVを「作り話」とみなし、女児の治療を拒否していた。

 5年以上前にHIVに感染したこの母親は、自身への治療も拒否し続けていた。シベリア(Siberia)の都市イルクーツク(Irkutsk)で過失致死容疑の取り調べを受ける母親には有罪の場合、2年以下の禁錮刑が科せられる。

 捜査当局によると、女児は2月、免疫不全患者で肺感染症を引き起こす肺炎の一種、ニューモシスチス肺炎を発症して死亡したという。

「女児の母親はHIV陽性で、自身と女児に対する治療を拒否した」と、捜査当局は声明で明らかにした。

 地域の医療施設は、女児が入院時にエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)発症の診断を受けていたと指摘した。

 医療施設は、声明で「この生後5か月の女の赤ちゃんは、肺が文字通り内側から破裂していた」と述べている。「母親はHIVなど作り話だと言い張って譲らなかった」と、医療施設は続けている。

 他にも2人の子どもを持つ母親は女児の死後、ただの肺炎で娘を亡くしたと医師らを責め立てた。

■治療拒否の一因に西側陰謀説

 政府によると、現在90万人以上のロシア人がHIVを抱えて暮らしており、新規感染者が1時間に10人のペースで発生しているという。大半の患者は、HIVが免疫系を破壊してエイズを引き起こすのを回避するための治療を毎日欠かさず続ける必要がある。

 関係当局と活動団体によると、HIVに感染しているロシア人で、抗レトロウイルス薬を服用している患者は全体の半数に満たない。その原因の一端は、エイズを引き起こすHIVは西側諸国がでっち上げた作り話だとする陰謀説にあるという。

 ロシア国内では、エイズ患者が治療拒否後に死亡したケースがこの数か月間に数件報告されている。この中にはサンクトペテルブルクで8月、両親が治療に同意せず死亡した10歳の女児が含まれている。

 シベリア・オムスク(Omsk)地域のエイズ対策センターは、子どもに治療を施すことを拒否したHIV陽性の母親らに対する訴訟3件で勝訴している。(c)AFP