【3月31日 AFP】2024年パリ五輪に向けた工事がほとんど開始されていない中、フランス政府の予算監視機関は30日、大会予算が当初計上された総額68億ユーロ(約8900億円)から、5億ユーロ(約650億円)を超過する恐れがあると警告した。また、セーヌ川(River Seine)沿いに建設される予定の選手とメディア用の五輪村の完成が遅れる懸念に加え、超過分を2億ユーロ(約260億円)より低く抑えるために、計画範囲と共同用地の縮小を勧告している。

 専門家による監視機関が財政、スポーツ、環境に関して発表した正式な報告書によると、主な懸念材料は大会経費として政府が投入を決めた税金は15億ユーロ(約2000億円)を超えない見通しであることが挙げられている。大会に必要な建設費は、すでに30億ユーロ(約4000億円)を上回っている。

 五輪村はパリ北部の3地域をまたぐもので、1万7000人の参加者を収容する予定の選手村には3000戸が建てられることになっている。監視機関の指摘によると、その用地は地下鉄の延伸工事や遺跡発掘現場、学校や外国人出稼ぎ労働者の住居予定地になっているという。

 通常の状況であれば「10年を要するプロジェクトを6年で完了させる」ことになる建設計画では、陸上競技が行われるパリ郊外サンドニ(Saint Denis)のスタッド・ド・フランス(Stade de France)に隣接して、飛び込みなどの競技が行われるプールが建てられることになっているが、報告書はこれについても不安視している。

 真っ先に指摘されている点として、この会場の予算は1億800万ユーロ(約141億円)でありながらも、同機関の試算では「税抜きで2億6000万ユーロ(約340億円)を超える可能性」があり、数字に大きな開きがある。さらに、このプールは年間50万ユーロ(約6500万円)の運営費がかかるものの、「その費用を支払う人間はいない」と警告されている。

 報告書では最後に、五輪のためにパリ周辺の他のインフラ計画に遅延が生じるとしており、特に延伸が計画されている地下鉄路線網のグラン・パリ・エクスプレス(Grand Paris Express)への影響を懸念している。(c)AFP