■USBメモリーを手渡し

 ロペスさんのチャンネル「Emma Style(エマ・スタイル)」はキューバの若者向けにメーキャップの指南をしているが、今も米国の対キューバ経済制裁が続き、キューバ経済の85%を国営企業が占めている中、紹介した商品は必ずしも入手できるとは限らない。

 そんな現実に配慮してロペスさんは動画の中で、アイシャドーの塗り方について「ブラシがないなら指を使って」とアドバイスしている。

 チャンネル「Pedrito el Paketero」のペドロ・ベイティア(Pedro Veitia)さん(24)は「ユーチューバーがチャンネルを立ち上げるとき、普通は自国民の支持を得たいと思うものだけど、私のフォロワーでキューバに住んでいる人はごく一部だ」「ハバナに住んでいるのは50人くらいじゃないかな」と話し、キューバのユーチューバーコミュニティーの規模は小さいと話した。

 キューバ政府が発表した統計によると、同国でインターネットにアクセスできるのは約450万人。ハバナ大学(University of Havana)のマックス・バルボサ(Max Barbosa)教授(コミュニケーション学)によると、非公式な統計だがキューバ国民約1100万人のうち約900万人がパッケージを利用しているという。

 キューバ当局は国民のコンテンツへのアクセスのコントロール権を握っているがパッケージに対しては寛容で、「バックパック(Backpack)」という類似の文化的コンテンツの配布さえ始めている。

 バルボサ教授は「インターネットへの常時接続ができない、あるいはインターネットを使ってコンテンツを制作することができないとしても、USBメモリーなどの代替手段でもいいから『ユーチューバーになりたい』と言う。これだけでも称賛に値する」と話し、今後はもっとキューバの現実に即したコンテンツを制作し、キューバ人フォロワーと直接対話することが大切だと指摘した。

「Emma Style」のロペスさんは「私たちは単に動画を公開しているから、共産主義の国にいるからという理由で『キューバのユーチューバー』と呼ばれたいわけではありません。自分たちのコンテンツで認められたいんです」 (c)AFP/Moises AVILA