【3月29日 AFP】孤独感が心血管疾患リスクに及ぼす影響は、最近の研究で示唆されているより小さいとの研究結果が27日、発表された。だが、社会的孤立は、実際に心臓発作や脳卒中発症後の死亡率を上昇させることが分かった。

 英国の男女48万人近くを7年間にわたり追跡観察した調査によると、孤独感と心臓病との間に存在するとされる関連性は、喫煙、飲酒、貧しい食生活、運動不足など、その他のよく知られた危険因子を考慮に入れると実質的に消失するという。

 心の通じ合う人がおらず寂しい気持ちが早死にに及ぼすとされる影響についてもこれと同様だった。

 しかし、英医学誌「Heart」に掲載された論文によると、リスクの高い生活習慣を考慮に入れてもなお、実際に一人だけで時を過ごす社会的孤立は、心臓発作や脳卒中を発症した人の死亡リスクを約30%上昇させたという。

 フィンランド・ヘルシンキ大学(University of Helsinki)のクリスチャン・ハクリネン(Christian Hakulinen)教授率いる研究チームは「孤独感ではなく社会的孤立が、死亡の独立危険因子として残った」と結論づけている。

 ハクリネン教授と研究チームは今回の最新研究で、40~69歳の男女47万9054人を7年間観察した「バイオバンク」と呼ばれるコホート(対象集団)調査データを利用した。

 調査の参加者らは、自身の民族的背景、教育レベル、所得、生活様式やうつ病歴などに関する詳細な情報を提供した。調査ではさらに、参加者自身の孤独度と社会的孤立度も調べた。孤独度は主観的な判断で、社会的孤立は1人でまたは他者と一緒に過ごす時間の長さで評価する。

 その結果、回答者全体の10%近くが社会的孤立状態にあると認められ、6%が孤独感を感じており、1%がその両方だった。

 研究チームはこの個人データを、心臓発作や脳卒中を初めて発症した人々および死亡した人々のデータと照合。健康を損なう生活習慣を考慮したところ、残ったのは社会的孤立との関連性だけだった。

 過去の一部研究によると、一人暮らしの人では早死にの傾向がみられるほか、がんを発症してから死去するまでの期間が短く、全体的に健康状態が悪いとの結果が示されたという。また別の研究では、認知症との関連も指摘されている。(c)AFP