【3月29日 AFP】投手と野手の「二刀流」でベーブ・ルース(Babe Ruth)氏と比較され、大きな注目を集める大谷翔平(Shohei Ohtani)が、米大リーグ(MLB)に旋風を巻き起こそうとしている。

 世界一要求が高く容赦のないリーグでのキャリアを踏み出そうとしている大谷だが、現時点ではまだすべてにおいて証明していかなければならない立場だ。

 ポスティングシステム(入札制度)の新協定により、2017年末から米各球団との交渉が可能となった大谷は、ロサンゼルス・ドジャース(Los Angeles Dodgers)、ニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)、サンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants)などとの交渉の末、最終的にロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)との契約にサインした。

 しかし、プレシーズンの試合では不安定なパフォーマンスに終始し、獲得に失敗したチームが、かえって損失を被ることを免れたのではないかと考える事態になっている。

 オープン戦では投打で苦戦した大谷は、先発登板したコロラド・ロッキーズ(Colorado Rockies)戦で1回3分の1を投げて7失点。また、24日に登板した紅白戦では速球の制球に苦しみ、6四死球を与え、暴投も2つあった。

■監督「彼は大丈夫だろう」

 しかし、そうしたパフォーマンスにもエンゼルスのマイク・ソーシア(Mike Scioscia)監督は平静を装っており、現在23歳の大谷は確実に成長しているという。「取り組んでいたことがいくつかあったが、いまは着実にものにしようとしている。ぴったりとかみ合っているときの速球は素晴らしい。初めの頃はやや不安定だった。彼は今もいくつかのことに取り組んでいる。大丈夫だろう」

 また、エンゼルスには一挙手一投足を追いかける日本のメディアが大挙して押し寄せているが、当の大谷本人はリラックスしており、スロースタートはいつものことだと強調する。

「開幕に備えるためにできることを全てやっていると思う。簡単ではないが、すべてを100パーセントでやってきた実感はある。日本でも開幕時に100パーセントだったことはない。徐々にシーズンに入っていく。今回も同じだと思う」

「理想的にはもっと多くのメジャーの打者と対戦したかったが、必要なのはそれだけではない。マウンドやボール、すべてのことにアジャストしていくのは自分。誰と対戦するかは関係ない」

 打席でも同じように苦しむ大谷は、これまで対戦したメジャーの投手に圧倒される場面もあった。オープン戦で対峙(たいじ)したドジャースのエース、クレイトン・カーショウ(Clayton Kershaw)からはカーブで三振に斬って取られるなど、洗礼を浴びせられた。

■代理人「批判の背景には負け惜しみ」

 大谷のこれまでの結果に対しては、MLBでプレーする段階にないのではという疑問の声も上がっており、ある球団スカウトは米スポーツ専門チャンネルESPNで、今後の飛躍のために今年はマイナーで経験を積むべきだという考えを示した。

 他にも、23歳のルーキーにデビューシーズンから圧倒的な活躍を期待するのは非現実的だと注意を促す評論家もいるが、当のエンゼルスは大谷のポテンシャルをサポートする体制で団結しており、シーズンが近づく中で経過に納得の様子を見せている。

「彼はまったく混乱していない」とUSAトゥデー(USA Today)に語ったエンゼルスのビリー・エプラー(Billy Eppler)ゼネラルマネジャー(GM)は、さらに「GMや監督の立場から見ても、心配はしていない。選手が落ち着いていれば、自分も落ち着くものだ」と続けた。

「われわれは彼の能力、実績を見てきている。日本はMLBに最も近いレベルだと考えているし、彼はそのリーグを支配した。他の選手も同じだが、評価をする前にチャンスを与えるのは当然のことだ」

 また代理人のネズ・バレロ(Nez Balelo)氏は、批判の背景には大谷と契約できなかったチームやスカウトの負け惜しみがあると考えており、USAトゥデーで「懐疑論者はいつも存在する。私にとって謎なのは、いま彼を疑問視しているチームやスカウトだ。4か月前に同じチームとスカウトが彼は選ばれた選手だと私に言っていたのだからね」と話した。(c)AFP/Rob Woollard