■減ったミツバチの巣

 トアランハニーの需要はそのわずかな供給量を上回っている。村人や町から来た業者に蜂蜜を売って得た金はメンバーで均等に分ける。

 取材した時の蜂蜜採取の参加者で最も若い人は45歳で、60代が数人いた。彼らの村には蜂蜜採取に関心を持つ若者がいないのだという。

 モハマド・ハイリ・モハマド・アルシャド(Mohamad Khairi Mohamad Arshad)さん(50)は「あいつらは根性がないんだよ」と言うと、ザイニさんは「若い世代は電子機器で遊ぶ方が好きなんだ。一緒に行こうと誘ったがあいつらは興味がない」と話した。1960年代にはトアランの木から蜂蜜を採るグループが1つの村に4つから5つあるのが普通だったが、最近はずいぶん減ったという。

 大規模な伐採がたびたび伝えられる中、近年はウルムダの森にいるハチの数も減ったようだ。ハチの自然生息地が破壊されたからだという人もいる。

 これは地球規模の問題かもしれない。専門家らはかなり以前から自然生息地の破壊や気候変動や病気によるミツバチ生息数の世界的な減少に警鐘を鳴らしてきた。

 これまでのところウルムダのハチ生息数に関する包括的な研究はないが、マレーシアプトラ大学(Universiti Putra Malaysia)のハチの専門家、マハジル・マーダン(Makhdzir Mardan)氏は、1983年にウルムダの森で実施した調査では128のハチの巣が樹上にあるのが見つかったが、今ではせいぜい40程度しか見つからないだろうと語った。

 モハマドさんは「ハチが餌を見つける場所がなくなりつつある」と言う。「花がたくさんないとハチは来ないよ」 (c)AFP/Patrick Lee