【4月8日 AFP】英イングランド(England)中部バーミンガム(Birmingham)で先月行われた世界最大のドッグショー「クラフツ(Crufts)」で美しさなどを競う犬たちの傍ら、異なるスキルを競う犬たちがいた。体に障害のある飼い主の命を救う特殊な訓練を受けたラブラドールやプードル、コッカスパニエルたちだ。

 この犬たちは視覚障害者を支えるためだけに訓練を受けただけでなく、聴覚障害者のためにさまざまな音を聞き分ける訓練や、てんかん発作の兆候を感知する訓練も受けている。中には、目覚まし時計の音やドアをノックする音、火災警報器の音などを聞き分け、前足を使ったり、特定の体勢を取ったりしてその情報を伝えることができる犬たちもいる。

 英障害者支援団体「Hearing Dogs For Deaf People(聴覚障害者のための聴導犬)」の広報を担当するベロニカ・ピアース(Veronica Pearce)さんは、クラフツに参加した同団体の目的について、障害者の自立を取り戻すことだと語り、「私たちのところには、以前は両親に頼りきりだったり、あるいは両親の方が離れることができなかったりしたけれど今は一人暮らしをしているという人たちが大勢います」と話した。

 英国では現在、約5000人の視覚障害者を含め、7000人以上が補助犬を利用している。同団体はこれまでに2000人以上を支援してきた。補助犬の訓練士を務めるジェニン・ホビー(Janine Hovey)さん(27)は、「もし誰かからある特定の音にリクエストがあれば、その音に対応するように必ず訓練します」と語った。別の部屋にいる赤ちゃんの様子を確認するベビーモニターに反応するよう訓練するのはその一例だという。

■取り戻した自由

 イングランド(England)北部リーズ(Leeds)にある倉庫で以前働いていたジョン・モリス(John Morris)さんの下には、同団体から送られたコッカスパニエルの「テオ(Theo)」がいる。「自分の自由を取り戻せた。彼がいなければ、外出できない」と話すモリスさんは15年前、仕事のせいで聴覚を失った。今はボランティアとして同団体で働いている。

 モリスさんにとってテオは、自分の代わりに音を聞いてくれる犬という以上の存在だ。テオを連れて歩き、テオがかき立ててくれる好奇心はモリスさんに自信を取り戻させた。「以前はしなかったけど、今は自分から人に話しかける。人の顔をまともに見れなかったんだ」「テオは私に新しい人生を与えてくれた」とモリスさんは語った。