【3月21日 AFP】フランスの田園地帯全域では過去15年間で、野鳥の個体数が平均で約30%減少しているとの憂慮すべき調査結果が20日、発表された。

 個体数の減少は野鳥数十種で確認された。一部の種では個体数が3分の2ほど減少していることが、国全体と仏中部の広大な農業地域をそれぞれ調査対象とした2件の研究論文で明らかになった。

 論文の共同執筆者で、仏国立自然史博物館(National Museum of Natural History)の保全生物学者のブノワ・フォンテーヌ(Benoit Fontaine)氏は「状況は壊滅的だ。わが国の田園地帯は文字通りの不毛地帯と化しつつある」と、今回の研究に参加したフランス国立科学研究センター(CNRS)発表の公式声明で述べている。

 約20年前から行われている詳細な年次個体数調査によると、ノドジロムシクイ、ズアオホオジロ、ヒバリなどのかつては広く分布していた種の野鳥類がすべて30%強減少している。渡りを行う鳴き鳥のマキバタヒバリは70%近く減少した。

 個体数減少の主な原因は、特にコムギやトウモロコシなどの単一栽培作物の広大な耕作地に殺虫剤を集中的に使用していることだと、研究チームは推測している。

 問題なのは、野鳥が殺虫剤で死んでいることではなく、野鳥が餌として依存する昆虫類が姿を消してしまったことだ。

■悪化が進む生態系

 最近の研究では、同様の傾向が欧州全体でみられることが明らかになっている。同研究によると、30年間で飛行昆虫が約80%減り、野鳥の生息数が4億羽以上少なくなったと推定されるという。

 CNRSの生態学者バンサン・ブルタニョール(Vincent Bretagnolle)氏は「本当に憂慮すべきなのは、農業地帯に生息する野鳥類全てが、(雑木林などの別の環境でも生息できる)『万能型』の野鳥でさえもが同じペースで減少し続けていることだ」と語る。「これは、農業生態系全体の質が低下していることを示している」

 しかし、野鳥の個体数減少を促進する要因は主な食料源の枯渇だけにとどまらないと、研究チームは指摘する。

 かつては広く行われていた休耕地の農業慣習が失われたこと、単一作物栽培地の著しく急速な拡大、そして森林の縮小などが、それぞれ要因となっている。

 今回発表の結果を受けてフォンテーヌ氏は「まだ不可逆的状況に達していないのであれば、全ての農業部門関係者はその実践方法を変えるために協力しなければならない」とコメントしている。(c)AFP/Marlowe HOOD