【3月20日 AFP】今年6月に母国初開催となるW杯(2018 World Cup)を控えるサッカーロシア代表のチームドクターは19日、同国の国内リーグについて、どのスポーツと比較しても「世界で最もクリーン」だと主張した。

 ロシアは2014年ソチ冬季五輪で組織ぐるみのドーピングを行っていたとして、先月の平昌冬季五輪では選手が五輪旗の下で個人参加を余儀なくされていた。ソチ五輪ではビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)副首相が大会責任者を務めており、ドーピングスキャンダルで中心的役割を担っていたとみられ、昨年12月に同国サッカー連合(RFS)の会長を離職している。

 しかし、ロシア代表のチームドクターを務めるエドゥアルド・ベズグロフ(Eduard Bezuglov)は、ここ数年間のドーピング検査で選手全員がクリーンであることから、疑惑の目を向けられる根拠は何もないと主張。RFSと同国の反ドーピング機関(RUSADA)が国内リーグの全チームを対象に「オンライン講習を義務化」していることに加え、医療ガイドラインを提示していることなどを説明した。

 国営ロシア通信(RIA)に対してベズグロフ氏は、「(ロシアサッカーは)世界でも例をみない。 言い換えれば、ほかのどのスポーツでも禁止薬物の問題を抱えていない例はないということだ。しかし、ロシアサッカーにはこうした問題は起きていない」と述べた。

 サッカー界を統括する国際サッカー連盟(FIFA)は、ロシアサッカーに関する過去と現在の薬物違反について調査を進めている。同国に対する最も大きな疑惑は、反ドーピング検査所元所長のグリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)氏が告発したもので、同氏はロシア政府から反逆者として追われており、現在は米国でかくまわている。

 ロシア代表チームが過去に薬物規定違反を犯し、現在の代表選手がドーピングに関与していたとするロドチェンコフ氏の告発内容について、FIFAとしては現状では確認が取れておらず、連盟は同氏に59項目の質問状を送っているものの、これまで公の回答は受け取っていない。

 2015年11月にRUSADAが世界反ドーピング機関(WADA)の認可を取り消されて以降、ロシア選手1500人の検査は国外で行われており、チームドクターによれば「この期間において、検査で陽性反応を示したものは一つもない」という。

「周囲が彼のことをどう考えようとも、これはビタリー・ムトコ氏の大きな手柄だと考えている。彼は常に、われわれにこう指示していた。ミーティングを開き、選手たちに物事に対する説明、教育、警告を行うこと。自分の意志を貫くこと。ただし、サッカー界でドーピング違反は絶対に出さないようにすること」

 FIFAはサッカーがドーピングとは無関係のスポーツであり、ロシアにおける過去のスキャンダルがW杯に影響を及ぼすことは何もないと強調。広報担当者はAFPの取材に対して、「反ドーピングプログラムの実施に、ロシアがかかわることはない。すべての検体はロシア国外にあるWADAの研究所で行われる」と述べた。

 ブラジルで開催された前回大会でも、FIFAは同国が当時認可を取り消されていたことから同様の措置を取っていた。(c)AFP/Dmitry ZAKS