【3月20日 東方新報】東日本大震災から7年が過ぎた。福島第1原子力発電所の事故後、原発20キロ圏内に住んでいた華人は転居を余儀なくされ、ほかにも多くの華人が福島を離れたという。

 現在、福島県在住の華僑華人は約4000人。あれから7年、福島に住んでいた中国人はどう過ごしてきたのか、福島華僑華人総会の竇元珠(Dou Yuanzhu)会長に話を聞いた。

 1965年生まれの竇会長は、中国・青海省(Qinghai)出身。現在はアルプス電気(ALPS ELECTRIC)で主任技師として働いている。竇会長によると、生活は元通りになりつつあるといい、困難が続いた中でも良かったこととしては、華人同士の連絡が密になったことだという。

■コミュニケーションを密に、不安や孤独を解消

 福島華僑華人総会は、震災後に設立した。福島在住の華人に対して本国から送られた募金の受け皿となったほか、日中両国の中国語メディアの取材対応、被災した華人の家庭訪問など、さまざまな役割を果たしてきた。

 被災した華人にとって最大の悩みは、精神的な問題や言葉の壁に加え、日本人の親戚や保険会社とのやりとりだ。総会はこの7年間、中国の祝日に合わせた懇親会を開催し、「自分たちが帰るべき『家』が福島にあると感じてもらえるように努めた」と竇会長は話す。

 ウィーチャット(WeChat)にも「福島華人交流グループ」を作り、互いにコミュニケーションを取りやすくする工夫をした。会員同士でも頻繁に質問し合ったり、情報交換をしたりするのに役立っているという。

■大使館・領事館員も奔走

 震災後、駐日中国大使館や、特に駐新潟総領事館は真っ先に救援に駆けつけた。特に深刻な被災地にも足を運び、被災者を探したり慰問したり、新潟へ避難するためのバスや帰国の手配などを行った。新潟へ避難した華人に対しては、住居や食料など全面的に支援した。

 竇会長は、「この7年間、駐新潟総領事館はずっと福島の華人を気にかけてくれている。『世界中の華人は皆が家族』なのだと感じている」と話した。

■日中関係の悪化による報道、傷つくのは自分たち

 竇会長は、福島の華人の多くが感じている精神的な問題は、被災したことによる心の傷ではないと指摘する。「日中関係の悪化によって両国のメディアが互いに悪い面や、偏った認識を報道することだ。このことで傷つくのは、日本に住む華人や中国に住む日本人だ」と話す。

 特に印象に残っている出来事として、竇会長は温家宝(Wen Jiabao)前首相の福島慰問を挙げた。総会は福島の華人を代表し、温首相を迎えたという。竇会長はこの時、温首相の訪日が中日両国民の気持ちを引き寄せたと肌で感じたという。

■団結して助け合う

「団結して助け合い、コミュニケーションをはかって親睦を深め、誠実に貢献を」が総会のモットーだ。竇会長は、今後も華人同士の交流や華人と日本社会との交流など橋渡し役として尽力していくとしている。(c)東方新報/AFPBB News