【3月17日 AFP】米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元スター選手で、元妻とその友人を殺害した容疑者となりながらも刑事裁判で無罪となったO・J・シンプソン(O.J. Simpson)氏が、試合前の国歌演奏で膝をついたコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)の抗議行動は間違いだったという見解を示した。

 現在70歳のシンプソン氏は約10年ぶりに、質問内容をNFLでのキャリアに限った本格的なインタビューに応じ、長年の選手生活で受けた頭部へのけがによる慢性外傷性脳症(CTE)の影響について心配していると述べた。

 シンプソン氏は米紙バッファロー・ニュース(Buffalo News)に対して「不安に襲われる」と話すと、「長期的というより短期的に記憶障害が起きると認識している。自覚しているのは、言葉が見つからない時があるということだ。知り合いの名前が言えないことがあって、そういう時は少し不安になる。特に疲れているときに、そういうことが起きる」と明かした。

 現役時代にRBとしてプレーしていたシンプソン氏は、史上初のシーズン2000ヤード突破を果たし、1シーズンの試合数が14試合だった時代にその快挙を成し遂げた唯一の選手となるなど、伝説的なNFLプレーヤーとして活躍。しかし、引退後の1994年には、元妻のニコール・ブラウン(Nicole Brown)さんとその恋人だったロン・ゴールドマン(Ron Goldman)さんを殺害したとして逮捕され、全世界から注目を集めたこの刑事裁判では無罪が確定したものの、民事裁判の不法死亡訴訟では敗訴した。

 2008年には武装強盗と誘拐の重罪で収監され、昨年10月に仮保釈となったシンプソン氏は、刑務所にいなければ米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)氏に投票していたかどうか問われると、「おそらくノーだ」と答えたものの、同大統領のキャパニックへの批判についてはおおむね賛成だと述べた。

 サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)の元QBキャパニックは、警察官がアフリカ系米国人を射殺した事件を受けて、社会的不公正や人種差別の問題を喚起するため、2016年のプレシーズン試合で国歌演奏時に膝をつくという抗議行動に出た。

 シンプソン氏は「コリンは間違っていたと思う」とすると、「彼が訴えようとしていたことには心から敬意を払う。しかし、国旗を標的にするのは間違った選択だった。私は(白人至上主義団体の)クー・クラックス・クラン(Ku Klux KlanKKK)が影響力を及ぼしていた時代に育ったが、そうした人間に反抗して聖書を軽んじるような行為はしない。警察への反発を理由に、国旗を軽視してはならない。国旗は米国民が望む姿を象徴するものだ」と語った。

 トランプ大統領は、国歌演奏時に膝をつく行為は国家や兵士を侮辱するものだと主張し、こうした抗議行動を示す選手の解雇を要求すると同時に、ファンに対しても選手に制裁を科さないNFLの試合はボイコットするように促した。

 2017年シーズンからNFLのチームと契約できていないキャパニックについて、シンプソン氏は「彼が最初に行動した時、『ギャンブルに出たな。君を褒めてやろう』と思ったよ。しかし、それを続けたことは最大の間違いだった。自分の信念を貫くことには大賛成だが、私はいつも国旗に敬意を持っている」と述べた。(c)AFP